訃報:H・G・フランシス
H・G・フランシス (H. G. Francis)
1936.1.14 – 2011.11.3
公式その他に掲載された情報によると、去る11月3日、元ローダン作家であり、シナリオライター、H・G・フランシスが長い闘病生活のすえ、ハンブルクにて死去したとのこと。享年75歳。
フォルツやマール、クナイフェルあたりが同年代で、現在のハヤカワ版あたりだと一番ばりばり書いている世代だが、クナイフェルがひとり気を吐いている以外、みな鬼籍に入ってしまった。時の流れは無常だ。
本名 Hans Gerhard Franciskowsky 。北部ドイツ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州シュタインブルク郡イツェホー生まれ。
今回、改めてフランシスの経歴を見ると、なんというか、ちょっと独特である。アビトゥーア取得後ハンブルクで経済学や社会学を学ぶとあるが、大学で、と書かれていないとか(まあ言い回しの問題だろうが)。ジュニア時代に州の水泳大会で優勝しているとか。作家になる前は製薬会社のエリア・マネージャーだったとか。
SFには幼少期から関心があり、アシモフやポール・アンダースンのファンであったようだ。最初に発表したSF長編は1962年の『五人のオリゴ』。その後もヘフト・シリーズ Mark Powes や Ren Dhark 、Rex Corda 等で執筆。ローダン・チームには1970年頃から参加し、まずはATLANシリーズから、次いで71年、518話『死への突撃』からローダン本編のレギュラー作家となる。
Perrypedia によると、残したローダン作品は本編ヘフト208話(うちの計算だと207なのだが……まだどっかリスト違ってるか^^;)、ATLANヘフト97話、惑星小説21巻。スペース・スリラー1巻、ローダン・エクストラ1話、ローダン・アクション1話、ヘフト特別号や記念号に掲載された短編が8編。あと、記載がないけど、Werkstattband で草案から書き起こす実例として、エスタルトゥの奇蹟・エメラルドの鍵の月がらみの話を書いていたはずだ。
2004年にチームからの引退を表明、2237話が最後の本編執筆。
フランシスの担当作品をつらつら眺めてみると、決して伏線回収がドーンとあるとか、エーヴェルスみたいにトンデモキャラクターがバーンとか、そういう作家ではないことがうかがえる。キーになる話のひとつ前とか、ひとつ後とか。サブキャラクターを少し深く描写する話とか。ハヤカワ版だと、闇のスペシャリストの昔話はフランシス担当だった。アプルーゼ・サイクルのアコン編もそうだし、トルカンダー・サイクルでの惑星ラファイエットの幕間劇とか、ギャラクティック・ガーディアンズ潜入編とかもそうだ。ゼーレンクヴェル問題の真っ最中に、ジャーナリストがボスティク皇帝のプライヴェートに突撃したりもする。キャラクター描写やストーリーを膨らませたりするのがうまい、ということなのか。
#ああ、アリオルクの宇宙城もフランシス担当か!(笑)
キャラクターの把握がうまい、と考えれば、フランシスがサウンドドラマのシナリオライターとして著名であることも納得できる。ここでいうサウンドドラマは、日本で言うドラマCDである。それぞれのキャラクターをアクターたちが声で演じるもの。
(ローダンのシルバー・エディションは「朗読CD」である)
実に600以上のサウンドドラマの脚本を書き、延べ購買数は1億2000万枚に達するという。ゴールドディスク(10万枚)が120枚、プラチナディスク(20万枚)が6枚だとか。「ローダン映画のシナリオはフランシスが書くのか?」と言われていたのも、いまさらながら頷ける。
#いまちょっと計算してみたけど、ゴールドが10万枚、じゃないかもなあ……。
先読みなどをやっていると、荒筋にしてみて「今回も話が進んでないよ……」とボヤくことも多々あったのだが、決してよく言う穴埋め(Lückenfüller)作家では、彼はなかったのである。
ローダン宇宙を彩った作家がまたひとりこの世界を退場したことを、残念に思う。
■公式News:H. G. Francis ist verstorben (リンク切れ)
■Perrypedia:H. G. Francis
■Wikipedia:H. G. Francis
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