訃報:エルンスト・ヴルチェク
元ローダン・シリーズ草案作家であったヴルチェクが、4月22日(火)、急性心筋梗塞で亡くなったとのこと。享年67歳。
エルンスト・ヴルチェク(Ernst Vlcek)
1941.1.9 – 2008.4.22
1941年、オーストリアの首都ウィーンに生まれる。1968年にローダン惑星小説46巻『検疫下の惑星』でチームに参加。1971年から姉妹編アトラン・シリーズ、おなじく本編ローダン・シリーズも509話「テラニアの盗賊」から執筆を担当している。
ヘフト作家の常として、創作分野は多岐にわたり、ホラー・シリーズ『デーモンキラー』(1973-77)や、ファンタジー・シリーズ『ミュトール』(1980-85)では草案作家も務めている(ペンネームはPaul Wolf)。
ローダン以外の邦訳作品としてはスペオペ『銀河の奇蹟』(全8話、邦訳は早川SF文庫から全4巻)がある。
ウィリアム・フォルツ没後の1984年から2000話が刊行された1999年末までシリーズ草案作家を担当。ツィークラー、マール、フェルトホフとコンビを組む相手は代わったが、フォルツによって構築されたローダン宇宙をいかに引き継ぐか試行錯誤を重ねた歳月、実質的にかれがシリーズの「顔」であった。
草案作家をフェルトホフに譲った後も執筆はつづけていたが、2231話「生命の音」を最後に引退を発表。ただし、これはローダン・シリーズからの「勇退」であり、著作活動自体は依然継続していた。Zaubermond社から刊行されている上記デーモンキラーの新シリーズに参加するなど、往年のファンを喜ばせると同時に、健在をアピールした矢先の訃報であった。
私見であるが、言葉……というものに関心をいだきつづけた人であったように思われる。ウィーン訛り(たぶん)で1話まるごと執筆してみたり、LKS(読者ページ)をヴルチェクが担当している期間、エスペラント語に関するコーナーを設けてみたりと、実験的なことを忘れない作家だった。
マインツのヴェルトコン2000(1999年12月開催)に参加しなかった筆者は、ついにお目もじする機会がなかったが、原書を読みはじめたのが1985年だったこともあり、ローダンの原書講読はすなわちヴルチェクによるローダン宇宙の再構築を追いかけるのとほぼ同義でもあった。楽しかった、と、御礼を述べると同時に、故人の冥福を心から祈りたい。
■公式News: Nachruf: Ernst Vlcek (リンク切れ)
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