ドイツSF大賞2005
すでに先月の話(5/21)だが、SFCD(ドイツSFクラブ)からドイツSF大賞2005の受賞作が発表された。
ここをご覧になる方には少々くどいかもしれないが、SFCDはドイツ最古のSFファンクラブで、1955年創設。発起人のひとりは、先頃無くなったローダン作家クラーク・ダールトンである。
そしてドイツSF大賞(旧称:SFCD文学賞)は、前年に出版されたSF作品の中から、9名の選考委員によって決定される。今回、その栄冠に輝いたのは、以下の2作品。
●長編部門:
Frank Schätzing / Der Schwarm (Verlag Kiepenheuer & Witsch)
フランク・シェッツィンク / 群れ
●短篇部門:
Karl Michael Armer / Die Asche des Paradieses (Shayol-Verlag)
カール・ミハエル・アルマー / 楽園の灰
『群れ』は1000ページに達しようかという大長編。ペルー近海で消息を絶った漁師。ノルウェーの石油ボーリング技師が発見した海底の新種の組織。カナダ沿岸にあらわれた鯨の異変。そして、日本で、ドイツで……個々ばらばらに思われたできごとは、実はすべてがつながっていた。海からの脅威は、世界のありようを変えかねないものだった――『ツァイト』誌にもとりあげられたベストセラー。分類は、実はホラー?
#海底で群れ、と聞くと『ブルー・シティー』のコノドント群体を連想してしまうが(古っ)、さてその正体やいかに。
一方の『楽園の灰』の主人公はシコルスキー大佐。第4ポーランド空挺師団、通称「マリア師団」の第2大隊長。世界各地に派遣された十字軍兵士の一員である。主とキリストの栄光を護るため、泥と汗と血にまみれて異教徒と戦いつづける日々の果てに待つものは……。「テロとの戦争」のいきつく先は、あるいはこんな世界かもしれない。
この短篇を収録する『神の息吹』(ヘルムート・モンマース編)からは、本作を含め6作がクルト・ラスヴィッツ賞にノミネートされている。現代ドイツSFの、ある意味最高峰ともいえる本である。いつか機会をみて、くわしく紹介したい。
■ドイツSF大賞公式サイト: Deutscher Science Fiction Preis
■SF-Infodienst: Deutscher Science Fiction Preis 2005: Die Gewinner! (リンク切れ)
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