ドイツSF大賞2017年ノミネート作一覧

ドイツSF

3/1付けSFCD公式サイトで、ドイツSF大賞2017年のノミネート作品が公表された。
2016年中にドイツ語圏の印刷媒体で発表された作品が対象。授賞式は6/16、今年の欧州SF大会兼SFCD年次大会である、U-con(於ドルトムント)にて開催予定。なんだか今年は、若干スケジュールが前倒しっぽい。たぶんユーロコンの日程から逆算なのかも。

ノミネート作品は以下のとおり:

長編部門 Bester deutschsprachiger Roman:

Dirk van den Boom / Die Welten der Skiir 1: Prinzipat / スキイルの世界1:元首政
Andreas Brandhorst / Omni / オムニ
Christopher Ecker / Der Bahnhof von Plön / プレーンの駅
Marc Elsberg / Helix / らせん
Andreas Eschbach / Teufelsgold / 悪魔の黄金
Jo Koren / Vektor / ベクトル

ディルク・ヴァン・デン・ブームの『元首政』は、2月末に第2巻『保護領』が刊行されたばかりのスキイル3部作第1巻。
200年前、地球は昆虫種族スキイルに征服され、完全に孤立した状態に置かれていた。今、その雌伏の時代が終わり、人類は「目覚め」たものとして、銀河社会への扉が開かれたのだ。しかし、それは地球が銀河に渦巻く陰謀と暴力へと巻き込まれることをも意味した。未知の敵はスキイル帝国本星をも攻撃対象としており、また地球にも根深い反乱勢力が存在した……。

クリストファー・エッケルは1967年ザールブリュッケン生まれ。SF作家……では、どうもないような。代表作である小説『ファールマン』は、19世紀の詩人にちなんだフリードリヒ・ヘッベル賞を受賞しているし、また別に詩集やエッセイも出している。
『プレーンの駅』は、ニューヨークのぼろアパートに、トロールみたいな従僕と住んでいる「僕」が主人公。「僕」は、〈水先案内人〉を通してとある組織の仕事を請け負っているのだが、たいていは死体運び。地下鉄を経由して、パリへ、アムステルダムへ、北独のキールへ……。だが、「僕」は疑問を抱いてしまう。なんで、地下鉄でアメリカからヨーロッパへ? しかも一瞬で? 自分はいったい何をしているのか、いや、そもそも自分はいったい何者なのか――?
独ツァイト誌の書評の見出しが「北国のマトリックス」、小見出しが「北ドイツのゲーム・オブ・スローンズ」である。参考までに(笑)

エシュバッハ『悪魔の黄金』は、〈賢者の石〉をめぐるスリラー……と、出版社は分類しているが、前作『イエスの取引』もスリラー扱いだったのだ。タイムマシン登場しちゃうのに(笑)
主人公ヘンドリク・ブスケはフィナンシャル・アドバイザー。愛する妻子がありながら人生への不満、世界からの疎外感を抱きつづけていたヘンドリクが、とあるアンティークショップで万引きした一冊の古書には、十字軍末期に発見された〈賢者の石〉にまつわる歴史の断片が記されていた。
放射能に汚染された金を生み出す〈賢者の石〉は、錬金術師とドイツ騎士団の暗闘を経て、ついに現代に蘇るのか。それは人々を楽園へといざなう鍵、それとも地獄の門を開くものなのか……?

短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:

Dirk Alt / Die Stadt der XY / XYの都市 (Exodus34号収録)
Gabriele Behrend / Suicide Rooms / 自殺部屋 (Exodus35号収録)
Andreas Eschbach / Acapulco! Acapulco! / アカプルコ!アカプルコ! (Exodus34号収録)
Marcus Hammerschmitt / Vor dem Fest oder Brief an Mathilde
    / 祭の前 あるいは マチルデに宛てた手紙 (Nova24号収録)
Michael K. Iwoleit / Das Netz der Geächteten / 無法者のネット
    (『ゲーマー』Gamer 収録)
Frank Lauenroth / Tubes Inc. / チューブス(株)
    (『健康第一!』Hauptsache gesund! 収録)
Ernst-Eberhard Manski / Korbball / バスケットボール
    (『80SF世界一周』Rund um die Welt in mehr als 80 SF-Geschichten 収録)

エシュバッハ、ハマーシュミット、イヴォライト、マンスキと、常連の名前が並んでいる。特にエシュバッハは長編でもノミネートされているが、どうなるやら楽しみである。

マンスキ「バスケットボール」が収録された『80SF世界一周』(正確には、“80以上のSFで世界一周”であるが、ヴェルヌへのオマージュなので)は、4年間かけてあちこちの国のSFを集めて編集されたもの。これまでドイツでは紹介されたことのない国の発掘をめざしたらしい。さすがに80ヵ国は無理だったらしいが、41の国々から集めた総94編。
あの……日本の Akiko Kawabata ってどなたですかね……。

■SFCD公式:DSFP 2017: Die Nominierungen
■参考:Around the world in 80 science fiction stories (リンク切れ)

んー……去年の顛末を報告してない……とゆーか、デスクトップに残る「ファンタスティーク大賞2016年ノミネート作一覧.txt」が……(汗)

Posted by psytoh