エシュバッハの『ハロウィン』

ドイツSF, 書籍・雑誌

アンドレアス・エシュバッハのホラー短篇『ハロウィン』を読了した。

本来は同名のアンソロジーに収録されたもので、ヴォルフガング・ホールバインとかエドガー・アラン・ポーとか錚々たる面子なのだが、今回のコレは、単独で刊行である。というか、翻訳とすら言えない。だって、白水社出版の、ドイツ語教本(副読本)なんだもの(笑)

B5判で本文40p。ここでいう本文は、左頁に原文と訳文、右頁に熟語や用語解説、ドリルが収録されたもの。原文はアンダーラインがひかれたり、穴埋め用の括弧が点在したりと、まんま教本。抄訳も設問関連の部分は省略されていたりするので、翻訳本と思って購入するとえらい目に遭う(遭った)。しかし、教本と考えればこれでいいのだろう。ベストセラーを楽しみながら……という企画は日本にだってある。
巻頭、エシュバッハが献辞を寄せている。母国語とかけ離れたドイツ語を学ぶ道を選んだみなさんに――「誰もが必然的に歩みよらざるをえない現在の世界で、”近い”とか”遠い”ということにどれほどの意味があるでしょう。外国語を学ぶ努力は、むくわれるものであろうことは疑いありません。わたしの作品が、その道を少しでも楽しいものとする一助となれるなら、とても誇らしく思います」(抜粋)とのこと。ああ、エシュバッハ、俺もー少しがんばるよ……。

ちなみに内容についてだが。
主人公(一人称の”ぼく”)は、卒業まぢかの大学生。親友ノルベルトは同学年の才色兼備のイルミナ嬢にのぼせあがっているが、彼女の方は単なる友だち以上には思っていない。それどころか、遊び人の院生との”できちゃった婚”が近いことはすでに公然の秘密だった。
ある日、ノルベルトが言う。「ハロウィンの夜には、悪魔を呼び出すことができるんだ……」
わらをもつかむというか、親友のあきらめの悪さにあきれながらも、深夜の森に同行した主人公が見たものは……そして、そのもたらした結末とは!?

ホラーの定番的な一品。むちゃくちゃこわい、ということはないし、エンディングでは失笑してしまったのだが。「男って、哀しいよなー」と。おもしろかったのはまちがいない。
いまの大学生って、こんなテキストで授業がうけられるなんて、いいよなー(オヤジ発言)
#ドイツ語読解の授業は、テストしか出なかった。ローダン読んでる方が楽しかったし(爆)

Posted by psytoh