クルト・ラスヴィッツ賞2005
ドイツの歴史あるSF文学賞、クルト・ラスヴィッツ賞の2005年度受賞作が発表された。2004年に出版された書籍や同年におこなわれた活動が対象である。主な受賞作は以下のとおり:
●長編部門
Frank Schätzing / Der Schwarm (Verlag Kiepenheuer & Witsch)
フランク・シェッツィンク / 群れ
●短篇部門
Wolfgang Jeschke / Das Geschmeide ( Bastei Lübbe)
ヴォルフガング・イェシュケ / 宝飾品
〔エシュバッハ編のアンソロジー『百京ユーロ』に収録〕
●翻訳作品部門
China Miéville / Die Narbe / Leviathan (原題: The Scarを分冊)
チャイナ・ミーヴィル / 痕 / リヴァイアサン (日本未訳)
●翻訳者部門
Peter Robert
―ダン・シモンズ『イリウム』の翻訳に対して
●イラストレーター部門
Dirk Berger
―ミハエル・マラク『イマゴン』のイラストレーションに対して
Michael Marrak
―SF雑誌PHANTASTISCH!表紙イラストに対して
●脚本部門
Norbert Schaeffer / Das letzte Geheimnis (WDR)
―仏の作家Bernard Werberの小説L’ultime secretのラジオドラマ化に対して
●特別賞
Klaus Bollhöfener
―SF雑誌PHANTASTISCH!(Havemann)の編集活動に対して
長編部門は先頃伝えたドイツSF大賞と同じくシェッツィンクの『群れ』。
短篇部門を征したイェシュケは、作家としてより編集者としての活動で名高い。今回の作品は、亜光速でひろがる人類のテリトリー、その辺境であるオリオン腕のコロニーを舞台とした物語。その惑星には人類より古い歴史をもつ先住種族が存在した。かれらはネパールのクマリを思わせる、生まれ変わる生神ケシュラを信仰する朴訥な種。ある儀式に人類大使の通訳として同行した歴史学者パラディエは、歴代ケシュラを象徴する宝飾品から、83あるダイヤの4つが欠けているのを目撃する……。謎解きではなく、むしろ広漠たる宇宙へひろがりつづける人類を描いた佳作。
ローダン読者として興味深いのは、特別賞を受賞したクラウス・ボールヘフナー。この人、以前はVPMのマーケティング部門総括者だったはず。いまも出版社担当者チームに名前は挙がっているのだが……兼業か?(笑)
■ラスヴィッツ賞の公式サイト: Kurd Laßwitz Preis
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません