クルト・ラスヴィッツ賞2019受賞作発表

ドイツSF

6月12日付け、ラスヴィッツ賞公式サイトにおいて、本年の受賞作が発表された。
恒例の、受賞作と、順位(得点)の一覧を以下に掲載する。

……ちゃんとノミネート作のリストを作っておかないと、これが案外めんどくさいのである。引越早々【亀】にならなくてよかった(汗)

■長編部門Bester deutschsprachiger SF-Roman:

  1. Andreas Eschbach / NSA – Nationales Sicherheits-Amt / NSA――国家安全保障局 (192)
  2. Tom Hillenbrand / Hologrammatica / ホログラマティカ (116)
  3. Dirk van den Boom / Canopus / カノープス (66)
  4. Frank Schätzing / Die Tyrannei des Schmetterlings / 蝶の専制 (62)
  5. Judith C. Vogt / Roma Nova / 新ローマ (58)
  6. T. S. Orgel / Terra / テラ (57)
  7. Georg Klein / Miakro / マイアクロ (56)
  8. Andreas Brandhorst / Ewigens Leben / 永遠の生命 (54)
  9. Andreas Brandhorst / Die Tiefe der Zeit / 時の深淵 (51)
  10. Kai Meyer / Hexenmacht / 魔女の力 (50)
  11. Willi Hetze / Die Schwärmer / 群人 (30)
    X. 該当作なし (5)
    ※投票者74名

エシュバッハ久々、7年ぶり9回目の栄冠である。しかもダントツ。
なんでこんな得票数を叩き出したのか、ちょっとひねくれた見方をしてみると:

ラスヴィッツ賞は例年200名の有権者に投票を依頼して1/3前後の返信があるみたい。ただし、今回気づいたのだが、

有権者(200)→投票者(95)→有効票(74)+無効票(21)
※有効票には「該当作なし」を含む。

という、その部門について投票権を行使しない、ポイント加算されない票が意外と多いのだ。

今年は総投票者数95名。そして、長編部門の有効票も昨年比19名増加している。その多くが“エシュバッハ押し”だとすると、ここ数年なかった高得点も納得がいくのだ。

■短編部門 Beste deutschsprachige SF-Erzählung:

  1. Thorsten Küper / Confinement / 隔離 (94)
  2. Heldrun Jänchen / Baum Baum Baum / 木木木 (77)
  3. Andreas Fieberg / Eine Million Affen/ 百万の猿 (73)
  4. Niklas Peinecke / Möglicherweise ein Abschiedsbrief/ たぶん別れの手紙 (62)
  5. Galax Acheronian / Trolltrupp/ 豚部隊 (54)
  6. Wolf Welling / Osmose / 浸透 (50)
  7. Thomas Sieber / Enola in Ewigkeit / 永遠のエノラ (49)
  8. Frank Neugebauer / Auferstehung des Fleisches / 肉の復活 (39)
  9. Stefan Lammers / Acht Grad / 八度 (37)
  10. Lothar Nietsch / Die Wettermaschine / 気象機 (27)
  11. Tetiana Trofusga / Coming Home / カミング・ホーム (26)
  12. Matthias Ramtke / In der Grube / 穴の中 (22)
    X. 該当作なし (5)
    ※投票者57名

受賞作「隔離」(ノミネート時の仮題は「拘束」)だが、掲載誌を間違っていた。NOVA 26号が正しい。お詫びして訂正する。

大財閥ヘルツフェルト=ザクソン・インダストリーズが運行する軌道ラボのひとつ、CFMT74からのライブ配信映像:
“最後の生存者”、サイバネティカーのジェンセン・リードンは、彼を含む5名の科学者が地上690キロのラボで進めていた実験の“失敗”した顛末を語る――彼らは、悪性新生物を感知し、排除するナノボットの開発をめざしていたのだが……。
ナノボットの“群体”が生み出したものとは、いったい何だったのか。いま語っている“リードン”はいったい――というお話。

次席となった「木木木」にも興味あるんだけど、こっちはKindle版なかったんだよなぁ。

■国外作品部門 Bester ausländisches SF-Werk:

  1. Jasper Fforde / Eiswelt / Early Riser / 雪降る夏空にきみと眠る (97)
  2. Cory Doctorow / Walkaway / Walkaway / ウォークアウェイ (95)
  3. Kim Stanley Robinson / New York 2140 / New York 2140 / ニューヨーク2140 (88)
  4. Adrian Tchaikovsky / Die Kinder der Zeit / Children of Time / 時の子供たち (87)
  5. Lavie Tidhar / Central Station / Central Station / 中央ステーション (79)
  6. Becky Chambers / Zwischen zwei Sternen
    / A Closed and Common Orbit / クローズドな共有軌道 (77)
  7. Annalee Newitz / Autonom / Autonomaous / オートノマス (49)
  8. Dennis E. Taylor / Ich bin viele / We are Legion / われらはレギオン (45)
  9. Naomi Alderman / Die Gabe / The Power / パワー (33)
    X. 該当作なし (5)
    ※投票者63名

受賞者は『文学刑事サーズデイ・ネクスト』のジャスパー・フォード。
このヒト、以前ナニかにノミネートされた時に少しだけ調べたのだが、3編だけ訳された『文学刑事』の紹介をされたサイトがあって、そちらを拝見してから、なんとなーく、後ろ髪をひかれるような気分が。まあドイツSF関係ないっちゃないんだけどw

■KLP公式:Kurt Laßwitz Preis

2019/07/06追記 「アーリー・ライザー」の邦題を変更

Posted by psytoh