カリブソの監視者 -現在1-
■22p
ハヤカワ版:
標識星ガンマ
原文:
Eckstern Gamma
試訳:
頂点星ガンマ
#恒星三角形(Sonnendreiecke)を構成する頂点(Ecke, 角)のひとつ。500話で出てきたハイペロン=ガル南のような標識星とは、意味合いがまるでちがう。
ハヤカワ版:
メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアの親友だった。とはいえ、有名な“カピンの断片”を目撃したことはなかったし、したくもなかったが。原文:
Mentro Kosum war einer der weniger Männer, die sich Alaska Saedelaere gegenüber so unbefangen verhielten, als existierten weder das Cappin-Fragment noch die Plastikmaske im Gesicht des Transmittergeschädigten.
試訳:
メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアに対して、顔のカピン片もプラスティック・マスクもなきもののようにふるまう、ごく少数の人間のひとりである。
#次文の「それでも、」も原文は sogar であり、「それどころか、」となる。
ハヤカワ版:
今回は礼儀正しくノックをしてからドアを開け、原文:
Auch diesmal war Anklopfen und Öffnen eins,
試訳:
今回も、ノックとドアを開けるのはほとんど同時だった。
#礼儀正しいどころか、なんのこだわりもない(unbefangen)わけで。
■24p
ハヤカワ版:
カピンの断片のせいで、完全に変化してしまったんだ。原文:
Der cappinsche Organklumpen kann Sie weitgehend verändert haben.
試訳:
カピン片のせいで著しく変化してしまったとも考えられる。
#人間じゃないの、決定事項なのか?(笑)
ハヤカワ版:
「わたしと飛ぶのはいやだと?」原文:
“Wollen Sie mir die Lust am Mitfliegen nehmen?”
試訳:
「わたしに同行する気をなくさせようとでも?」
#「行くのはやめたとでも言わせたいのか?」くらいでもいいかと。
■25p
ハヤカワ版:
「旦那はいつも、スタート直前に乗ってくるんですよ。とさかをぴんと立てて。そういうことですぜ、親方」原文:
“Der Meister kommt immer erst kurz vor dem Start an Bord. Haube auf und ab. So geht das, Korpsführer.”
試訳:
「巨匠たるもの、いつだってスタート直前に乗りこんで、フードをちょいとかぶる。それでいいんですよ、隊長殿」
#なにかの引用だったりするのだろうか、訳文意味不明。Haube はおそらくサート・フード(SERT-Haube)で、ロイドはミュータント部隊(Mutantenkorps)の隊長である。
ハヤカワ版:
顔をしかめた。どうやら、自分は歳をとらないらしい。原文:
Ein Mann, der sein entstelltes Gesicht hinter einer Plastikmaske verbergen mußte, alterte nicht.
試訳:
その醜貌をプラスティック・マスクにかくした男は、歳をとらないもの。
#抽象表現だが、マスクに隠れて年齢不詳になる、くらいの意味か。
ハヤカワ版:
実際、いまや問題は、自分は人類なのか、それともカピンか……そこに収斂するように思えた。原文:
Allerdings erhob sich die Frage, ob Alaska ein Mensch oder ein Cappin war.
試訳:
とすると今度は、自分が人間なのか、それともカピンかという問題が生ずる。
#カピンなら歳をとらないわけではない。
■26p
ハヤカワ版:
自分が人間だとは思っているが、他人が正常だと考えても無意味だった。むしろ、自分が異常なのだと考えるケースのほうが多い……原文:
Alaska sah sich selbst als Mensch – aber er hatte begonnen, von den snderen als den Normalen zu denken und zu sprechen, was nicht mehr und nicht weniger bedeutete, daß er sich selbst als Abnormalen ansah.
試訳:
自分が人間だとは思っているが、だんだんと他者を“正常な人間”と考え、またそう呼ぶようになりつつあった。それはアラスカが自身を“異常者”とみなしたことに他ならない。
#原文を分解する場所、まちがえたと思われ。
■27p
ハヤカワ版:
それに、これほど壮大な実験を完遂できれば、科学技術は大きく進歩する。できることはすべてやってみるつもりだった……原文:
Rhodan war sich darüber im klaren, daß von der Planung bis zur Durchführung eines solchen Experiments wissenschaftliche und technische Großleistungen zu vollbringen waren, aber er wollte nichts unversucht lassen.
試訳:
これほどの実験の立案から完遂までには、科学的かつ技術的にも大仕事をなしとげねばならない。だが、できる手はすべて打っておきたかった。
#waren zu vollbringen を、可能とみるか、必然とみるかだが、接続詞が aber なので、負担がかかる「~ねばならない」とすべき。
■28p
ハヤカワ版:
非常時には、わたしが指揮をとることもある」原文:
Im Alarmfall kann ich sogar dem Kommandanten Befehle geben.”
試訳:
それどころか、非常時には艦長に命令を下すこともある」
#と、その艦長に対して言っているわけで。
■29p
ハヤカワ版:
「くれぐれも連絡を絶やさないでください」と、ローダンが念を押した。原文:
“Die Übereinstimmung darf nicht verlorengehen”, warnte Rhodan.
試訳:
「くれぐれも申し合わせのとおりに」と、ローダンが念を押した。
#シンクロ、と訳すべきだろうか。具体的には、ローダン側がATGフィールドを解除し、同時にアトラン側で10隻の部隊が分離・陽動をおこなう。つづく文章もごっちゃになっている。
ハヤカワ版:
「一瞬ですむはずだ!」と、アルコン人が応じる。原文:
“Es wird auf die Sekunde klappen!”, versprach Atlan.
試訳:
「一秒たりと遅れはせんとも!」と、アトランが約束する。
#klappen は「うまくやる」。auf die Sekunde は「一秒にいたるまで」。
■31p
ハヤカワ版:
「コスムが疑念を持っています。正確な理由はわかりませんが、カピンの断片の影響が強まるのを恐れているのでしょう。シェーデレーアのほうは耐えています」原文:
“Kosum hat ihn unter Druck gesetzt. Ich weiß nicht, ob se richtig war, aber Alaska hat es ertragen. Kosum scheint zu befürchten, daß Saedelaere immer stärker unter den Einfluß des Cappin-Fragment gerät.”
試訳:
「コスムが圧力をかけていました。その正否は判断できませんが、アラスカは甘受したようです。コスムの懸念は、カピン片の影響が強まりつつあるというもので」
#これも、原文の分解位置がちがう。編修時に入れ替わった?
ハヤカワ版:
アトランは真顔になり、原文:
Atlan verzog unwillig das Gesicht.
試訳:
アトランは思わず顔をしかめて、
#しかめ面が真剣な表情か否かはさておいて。
ハヤカワ版:
作戦指揮官原文:
Stellvertretender Einsatzleiter
試訳:
指揮官代行
#アトランはちゃんと司令室にいるぞ。
ハヤカワ版:
テレカムで原文:
an einen Interkomanschluß
試訳:
インターカム端末で
#これも編修ミスか。
ハヤカワ版:
「ちょうどいいタイミングでした」と、にこやかに、「スタートのようすを見ておくつもりでしたから」、原文:
“Ich wäre sowiso in die Zentrale gekommen”, sagte Alaska. “Schließlich will ich den Start in allen Phasen auf den Bildschirmen miterleben.”
試訳:
「いずれ司令室には来るつもりでした。スタートのようすをスクリーンで見ておきたかったので」
#「にこやかに」は明らかに余計。あまりに内向的、と評した前文とも矛盾する。「呼ばれなくても司令室にくるのに…ブツブツ…」くらいのが流れ的にはマッチするはず。
■32p
ハヤカワ版:
「わたしが着用していないかどうか、それが心配なのだな?」原文:
“Vielleicht hätte ich ihn nicht mitnehmen sollen.”
試訳:
「あれを持ってくるべきではなかったのか」
#あれ=殲滅スーツ。たぶん、着てなくても不気味。
■33p
ハヤカワ版:
飛翔生物の末裔原文:
Flugwesen
試訳:
飛翔生物
#末裔かもしらんが、まだ、飛ぶはずである。
ハヤカワ版:
どの種族もその気まぐれに迎合したもの。原文:
Sie beugten sich seiner rücksichtlosen Herrschaft,
試訳:
どの種族もその傍若無人な支配に屈した。
#あえて言えば、誤訳ではない。ないけど……orz
■34p
ハヤカワ版:
ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。これまでも、たびたびラール人の表情を読もうとしたが、うまくいっていない。レティクロンとしては、この計画をいつでも実行にうつす用意がある。しかし、一方で責任を回避したいのもたしかだ。この種の殺戮には、七種族のヘトスの承認を得たほうがいい。原文:
Dem Gesicht Hoghmar-Feerns war nicht anzusehen, was er von diesem Vorschlag heilt. Leticron hatte schon ein paamal solche Angriffe verlangt, doch bisher waren die Laren und die Hyptons nicht darauf eingegangen. Leticron hätte nicht gezögert, seinen schrecklichen Plan in die Tat umzusetzen, doch er wagte nicht, die Verantwortung dafür allein zu übernehmen. Gerade für solche Planetenmorde brauchte er die offizielle Zustimmung des Hetos der Sieben.
試訳:
ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。すでに何度かこの種の攻撃を要請したが、いまのところラール人とヒュプトンの了承は得られないでいた。レティクロンとしてはこの恐怖のプランを実行にうつすことに何のためらいもなかったが、責任を一身に負うことは避けたい。惑星殲滅ともなれば、七種族のヘトスの公的承認が必要である。
#うまくいっていないのは、表情を読むことではない。
■37p
ハヤカワ版:
立ちあがり、原文:
Atlan richtete sich im Sitz auf.
試訳:
姿勢を正すと、
#立ったらあぶないのでは。余裕ぶってみせていた(36p参照)のが、臨戦態勢に入った、ということ。
ハヤカワ版:
攻撃はまだないものの、敵の十数隻はすでに《カリオストロ》を射程にとらえているはずだ。このままでは、最初のリニア航程にはいる前に、撃墜されてしまうだろう。原文:
Es war noch kein Schuß gefallen, aber mindestens ein Dutzend gegnerischer Schiffe hatte Aussichten, die CAGLIOSTRO zu erreichen und zu vernichten, bevor sie auch nur sie erste Etappe ihres Fluges hinter sich gebracht hatte.
試訳:
攻撃こそまだないものの、最低一ダースの敵艦が、《カリオストロ》がまだ飛行の第一段階すらこなさないうちに、捕捉殲滅しようと接近しつつあった。
#「~ともくろんでいた」わけだが、それだと緊迫感がないので。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません