時間超越 -2-
「時間超越」第2章ということで、ようやく、問題の人形使いカリブソの再登場である。今後、ほぼちょうど200話(100巻)にわたって、(時々)彼岸への秘密の案内人となる。そして、毎度まきこまれるローダンとシェーデレーア(笑)
ああ、わずか3ページと油断していると、えらい目に遭う……よ?(汗)
■149p
ハヤカワ版:
いつでも、この“意識ある夢”のなかで、出口に近いところにいたかったから。
原文:
Jedesmal, wenn er sich zu einem der bewußten Träume niederließ, wählte er diesen Platz, denn er wollte nahe am Ausgang seiner gewohnten Umgebung sein, wenn er einen Hinweis erhielt.
試訳:
“意識ある夢”をおこなう際、いつもこの場所を選ぶのは、手がかりが得られたとき、すぐにでもこの狎れた環境から逃げだせる出口に近くありたいからだ。
少々うがった見方なのは認めよう。意訳……というか超訳のたぐい。
ただ、「すぐ時間の井戸経由で“帰還”できるように」と読むのは、それほどまちがっていないと思うのだ。
あと、“意識ある夢”は、直訳に近いけど、わかりやすくていいと思う。以前、“覚醒夢”とやったけど、字面からしてアレだったもの。
ハヤカワ版:
これまで、三つの意識ある夢を通りぬけて、そのたびに驚くべき経験をかさねてきたもの……アッカローリーのゼノとして、あるいはペトラクツ人ガイト=コールとして。その過程で、何度かシュプールを見つけたと思ったが、結果的に望みはかなわなかった。だが、第三の夢ではじめて希望をとりもどしたのである。
原文:
Bisher hatte Callibso drei bewußte Träume hinter sich gebracht und dabei eine erstaunliche Erfahrung gemacht. Als er vor langer Zeit mit dem Accalaurie Zeno und dem Petraczer Gayt-Coor zusammengetroffen war, hatte er geglaubt, eine Spur gefunden zu haben. Diese Hoffnung hatte sich später zerschlagen, aber in den drei ersten bewußten Träumen war sie aufgefrischt worden.
試訳:
これまで三つの意識ある夢をこなし、驚くべき体験をした。ずっと以前、アッカローリーのゼノやペトラクツ人ガイト=コールと出会った際、シュプールを見つけたと思ったもの。じきに潰えさったその希望が、三つの夢のなかで息をふきかえしたのだ。
……地の文で「~したもの」ってやるの、あまり好きじゃないんだが(笑) あれ、ローダンの決めゼリフだよね。それはさておき。
この章の一番の“誤訳”は、意識ある夢のなかで、カリブソの超自我が“誰かを演じている”という設定である。Als が人名の直前についているなら、まだわからないでもないのだが……これ、明らかにwhenだから。
超自我とかなんとか、オカルトっぽい用語が登場したけれど……これって、要するに幽体離脱だよね? >おキヌちゃん(古
■150p
ハヤカワ版:
もっと早くここにくるべきだったと後悔したが、意識ある夢にはいったあとは、回復のため、長い休憩時間が必要だった。夢のなかの役割を演じるには、その対象を完全に遮断しなければならないから。
原文:
Callibso bedauerte, daß er nach jedem bewußten Traum eine längere Erholungsphase eilegen mußte, so daß es ihm schwerfiel, die Träume jeweils an der Stelle fortzusetzen, wo er sie unterbrechen mußte.
試訳:
残念なのは、意識ある夢をおこなうたびに、より長い回復期間をおかねばならないため、前回やむをえず中断した場所から夢を再開するのが困難であること。
とはいえ、今回はうまくダッカル次元バルーンに実体化できているようだが。
とにかく、上述のとおり、“演じる”設定ができてしまったため、役割とか対象とか、原文にない表現をもってきて、よけいワケワカメな状態になっている。
ハヤカワ版:
実際、第二の夢では、超自我がパニックにかられ、あわててその肉体から逃げだしたもの。
原文:
Im zweiten Traum hatte das Über-Ich sogar panikartig reagiert und sich sofort in den Körper zurückgezogen.
試訳:
第二の夢では超自我がパニックにかられて、あわてて肉体に逃げもどった。
これまた、演劇設定のおかげで、肉体が、まるで憑依先のものであるかのようだ。
取り憑いてない、取り憑いてないよ~。だいたい、その場合、in den Körper って定冠詞で流さないでしょう(訳文どおりなら aus dem Körperかな?)。einとderの法則……とはまた違うけどwww
※追記:vom Körperっぽい……
ハヤカワ版:
カリブソもナウパウムで遭遇した個体には、そのことを告げなかった。その男は当時、生きのこり、おのれの“永遠の同盟”に復帰することに没頭していたから。
いま、ここで見つけたテラナーは、自分が同族から乖離しつつあり、殲滅スーツとの関係を絶たないと、種族にうけいれられないと思っている。
原文:
Callibso selbst wußte nichts über diese Rolle zu sagen, zu lange hatte er fern von seinem Volk und damit von aller Information leben müssen. Das Problem, das ihn jetzt vor allem beschäftigte, war das der Rückkehr zu dem Verbund der Zeitlosen. Er befürchtete, daß er sich schon so weit von seinem Artgenossen entfernt hatte, daß sie ihn auch dann nicht akzeptieren würden, wenn er den Anzug der Vernichtung zurückbrachte.
試訳:
それがいかなる役割であるかはカリブソも知らない。あまりに長く、同胞から、したがって情報からも、遠ざかって生きてきたのだ。現在かれが没頭している問題は、“時知らざる者の同盟”への帰還である。とはいえ、同胞たちから乖離しすぎた自分が、殲滅スーツをとりもどしたとて、うけいれてもらえるかどうか。カリブソの懸念するところだ。
さて、一番興味のあった Zeitlose であるが……訳すの避けたかw ある意味、賢明である。“時間超越者”とかやってたら頭かかえたよ、わたしゃ。前回の登場時に語った“永遠の同盟”Bund der Ewigen も、意味としては同じだしの。
カリブソはローダン自身とは遭遇してないし、あんまり語るべきこともなかったのだろう。もうひたすら自分のことばかりである。段落変えてアラスカの話題になっているのも、訳文だけ。ああ、この段落に役割(Rolle)とかあるから、あんな発想になっちゃったのかな。
■151p
ハヤカワ版:
カリブソは背をもたれ、くつろいだ。
原文:
Er legte sich auf den Rücken und entspannte sich.
試訳:
カリブソはあおむけに寝そべり、緊張をといた。
「背中の上に横たわる」のだから、上むいて寝たんだよ。背もたれにしては、対象が書いてないしね。
ハヤカワ版:
やがて、
原文:
Kaum, daß er eingeschlafen war,
試訳:
寝入るやいなや、
いや、まあ、別にいいんだけどね、このくらいは……。
ハヤカワ版:
いつものことだが、分離したあとも物理的な肉体を“感じる”ことができた。
原文:
Jedesmal, nachdem die Trennung vollzogen war, empfand Callibso den physischen Körper als fremdartig. Das Über-Ich allein bot ihm die Möglichkeit einer völligen Identifizierung.
試訳:
いつものことだが、分離が終わると、肉体を見知らぬもののように感ずる。ただ超自我だけが、自分が誰であるかを証だてる手段だ。
……めんどくさいとこ、全部はしょったよーに見えるのは、気のせいだろうか。
うう、3章長いし、両サイド入り乱れてるなあ。め、めんどくさそ(ry
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