364巻『闇のスペシャリスト』雑感

ハヤカワ版

で、やっと今月の新刊、364巻『闇のスペシャリスト』である。これまた先週には読了してたんだけど……まァ気力がうせたのは本編の内容とは関係ない。前後編とも、著者はH・G・フランシス、訳者は統括・五十嵐さん。

前半「闇のスペシャリスト」、後半「千年眠る者」を通して、闇のスペシャリスト・オルウの目から見た、ツグマーコン人と公会議発展の歴史が描かれる。ただし、スペシャリストの能力を利用することをもくろんだツグマーコン人の権力者によってオルウら12名は幽閉の憂き目をみるため、とてつもなく断片的である。
基本、ダッカル空間に転落した惑星グロジョッコから、新たな銀河への次元トンネルを開通させ、公会議を構成する種族を(オルウが望むと望まざるとにかかわらず)リクルートする場面の連続である。ずっとかれにつきまとう、謎のグリーンの顔のヴィジョン(ホントにマスティベックなのかなあ……)との闘い、ツグマーコン人の歴代独裁者の野望に対する静かなる反抗――

と、書くと聞こえはいいが、オルウたち、ただひたすら流されていくだけである(爆)
いまは何もできないが、そのうち、そのうち……と言いながら、実際に対策を講じたようすがまるで見られない。かれら12名を培養したガルコン・エルヨグは優秀な科学者だったようだが、根本的に育て方を誤ったようだ。

※以下、重度のネタバレを含むため要注意(^-^)b

そもそも、かれら12体は、コルトン人が最終的に公会議を支配するため、エルヨグをひそかに感化して創らせたというが、この性向じゃ、本来の目的にそった使用にたえないことはなはだしい。いいのか、フォイロクロン、こんなんで(笑)
さらに余談として、スペシャリストの名前は、Wが含まれると男性、Yが含まれると女性で、これはコルトン人の元首の称号“ウィ(WY)”を分割したという設定もあるらしいが、翻訳、考慮してなさそうだな……。

ともあれ、次元トンネルをあやつる技術をもつオルウを友にしたことで、期せずしてダッカル次元バルーンに漂着した《ソル》の人々にとっては、脱出への道が大きく開けたかに見える。だが、この空間を支配するのは公会議の実質的支配者ツグマーコン人で、かれらの手中にはまだ残り12名のスペシャリストたちが囚われている。
そもそも、1人仲間にしただけで満足するローダンでもあるまいw 次回以降の展開は、読者としてもなんとなく予想がつくというものである。発進ごーっ。

Posted by psytoh