2700話『テクノ・ムーン』お試し版
歴史はくりかえす、と言うけれど――。
西暦1971年6月19日、彼は宇宙船《スターダスト》で月へと飛び立った。乗員は、彼を含めて4名。それがすべてのはじまりだった。
それから3130年。新銀河暦1514年6月15日。
彼はまた、月をめざすだろう。今度もまた、乗員は4名。船名は《スターダイヴァー》と変わっているが……。
US宇宙軍の本番パイロットに求められたのと同等の、あるいはそれ以上の危険をともなう旅。
また何かがはじまるという保証はない。
彼はたどりつけるだろうか。夜空に輝く、どこか禍々しい、くすんだ緑の光をはなつあそこ――テクノ・ムーンまで。
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新銀河暦1470年1月17日、ニューロバースをめぐる事件は幕を閉じ、異常空間に誘拐されたソル星系は、元の座標へと転送された――はずであった。
しかし、恒星ソルが原ポジションに復帰したのは、1503年8月26日。33年の遅延が生じただけではなく、この星系からは1個の衛星が欠けていた。ルナである。
星系をトータルコントロールしていたネーサンの欠落、衛星消失による潮汐作用の欠如等々、日常生活の復旧は困難をきわめた。34年の不在期間を経て、自由テラナー連盟の首星の座がプレアデス星団の惑星マハラニから戻ってくることもなかった。だが、テラの人々は、むしろ重い荷を肩からおろしたように、安堵してさえいたのだった。
新銀河暦1512年5月22日、変わり果てたルナが、元の衛星軌道上に帰還するまでは。
直径、質量その他から、それがルナであることは明白だった。
だが、その表面は未知の構造体――“テクノ殻”ないし“テクノ・メッシュ”と呼ばれるものに覆いつくされていた。機械や装甲エレメントその他、工学技術的な何かの網状構造……かつて人々の慣れ親しんだクレーターや“海”は、それらに埋もれて影もかたちもなかった。
そして、ルナ・シティをはじめとする都市に住まっていた人々がどうなったのかを調べる手段すらなかった。月面から1万2000キロメールの距離をおいて、ルナを包む謎の力場“リパルサー・ウォール”が、いかなるものの接近をも拒絶したからだ。コスモクラートの工廠惑星エヴォラクスで改装された《ジュール・ヴェルヌ》ですら、この障壁を超えることは不可能だった。
直接的な脅威は、何もない。
ジュピター級ウルトラ戦艦《エラス・コロム=ハン》を旗艦とする1000隻の艦隊が、月面から3万キロの宙域に展開し、交通を封鎖するとともに、たえず月面の観察を続けている。緑がかった灰色のメタルの網は、ごく一部では拡大・変形をつづけている。どのようにして行なわれているのかは、不明。そもそも、ロールシャッハ・テストのように、見るものによって受ける感じはまったく異なる。工業施設? 兵装システム? 発着場? ――答えは見えない。
けれど、だからこそ、例えば、かつて惑星トロカンを包んだクイックモーション・フィールドのように、その裏側になんらかの危険を孕んでいないとは、誰にも言えなかった。くすんだ緑の月を夜空に見ること、そのものが人々を不安にさせた。星系外への移住は、時とともに増加の一途をたどっている。
無論、謎の存在を、座して黙認するわけもない、一部の人々がいる。
「ワリンジャー・アカデミーの副次的な実験の一環」と称して、テラニア・スペースポートの一角に設けられた不透明なドームの影では、技術の奇跡ともいえる1隻の宇宙船が極秘裏に建造されていた。その名を《スターダイヴァー》。
6月15日、LFTの首席科学者となったシク・ドルクスタイゲル来訪のニュースがペリー・ローダンのもとへ届いた。《スターダイヴァー》発進の時が迫りつつある……。
同じ頃、イーストサイドのガタミュズ星系では、ポリポート駅《イタフォル=5》警固艦隊旗艦《ガルブレイス・デイトンV》司令室にひとつの急報が入っていた。
13年前までこのポリポート駅はサウスサイドの恒星転送機ナベグ五角形近傍に置かれていたのだが、転送機のハイパーエネルギー場との相互作用が原因と思われる、度重なる転送遅延に鑑み、テラから59475光年の距離にあるガタミュズ星系へと移転された。しかし、それ以降、イーストサイドのブルー族と、ノースサイドに逆移住してきたテフローダーの新タマニウムとのあいだの紛争のタネとなっていた。4年前には砲火が交わされるまでにいたり、以降、テフローダーは《イタフォル=5》への接近をブルー族によって阻まれている状態である。
だが、今、《ガルブレイス・デイトン》の探知機は、明らかにテフローダーのものである偵察部隊をとらえていた。艦長であるアンナ・パトマン大佐は、ペパーミント・ティーのカップを置くと、警報発令を命じた……。
……と、まあ、Leseprobe ではこんな感じで、新サイクル「アトピア法廷」は開幕する。
ルナを“テクノ・ムーン”へと変貌させたものは誰あるいは何で、その目的はなにか。また、現在ルナは、そこにいた人々は、ネーサンはどうなっているのか。
一方、イーストサイドに起きつつある紛争はいかなる推移をたどるのか。
Leseprobe はおよそ20ページ弱、版組みがちがうので、ヘフトだとせいぜい8ページ程度だろう。おそらく、《スターダスト》とおなじく、6月19日(シェールの誕生日)に、《スターダイヴァー》も打ち上げられると推測する。
そして、Leseprobe では触れられなかった、「かつてソル系に属していた暗黒惑星メドゥーサ」を探す謎の大富豪の目的とは? イーストサイドのドンパチと関係あるのか?
ローダンが遭遇するというオンリョン人(表紙の異星人)とは、はてさて何者? やっぱルナにいるの?
でもって、付録ポスターの題材である宇宙船《クルーゼンシュテルン》は、いったいどのへんで出てくるの?
前サイクルでまったく出番のなかったアトランは?
《ソル》ごと消息を絶った放蕩息子ver.1たるマイコー・ローダンはいまいずこ?
ついでに、「600からはじまるサイクルはコケるけど、700からのサイクルはきっとおもしろい」とゆーマガンの予言は的中するのか?(爆) 乞うご期待!!
ディスカッション
コメント一覧
なんか罪犯したんで、ローさん、ボッさん、出頭せい、って話みたいですけど、これ久々の大宇宙の秘密に関係するっぽいストーリー?
まぁ……カビのはえた話を突然持ち出されてもw とか
「正当防衛DA!!」のひと言で片づきそうな話とか
まだやってないことをネタに怒られてもwww とか
すげー先行き不安な法廷でございます(笑)
超知シリアルキラー・ローダンとか、むしろコスモクラート的には、間引きの手間がはぶけて喜ばれてそーな気がしないでもないのに、秩序系じゃないのかなー、こやつら。
これが(銀河広場とかBBS系で)めっさ好評なのは、どんだけニューロバースで読者さんが凹っていたかよくわかるのでありましたw
ニューロバースの件で秩序から目を付けられるということはないのでしょうか。「全てはデロリアン・ローダンの一存で」と弁明しても、「”それ”が裏で糸を引いているのは明白」といった感じで。
しかしローさんはともかく、ボッさんも知らない所でローさん並みにすごい活動してたんだろうか。
〈それ〉は表向き(?)休眠中になってますけど……トレゴンがらみの二重スパイの実績()もあるし、トントンですかねえ(^-^;
めっきり出番のないボスティク皇帝/議長さん。あのヒトはアレで、ローダンと組むとトンデモないことになりますからねえ……。太陽系政庁にマイクロけだもののアサシン部隊が突入したときとか実にいいコンビで(笑)
きっと身におぼえのない(未来の)罪状がごまんとあるのでわ~w