ローダンーアトランティス終幕近し

ローダン

3月18日に開幕したミニシリーズ〈ローダン-アトランティス〉が、今週発売の12話「骸詞」で完結を迎える。
いかんせん本編はあまり読めていないのだが、ここらで拾い読みでつかんだ概略だけでもまとめておきたい。

  1. Ben Calvin Hary / Im Land der Sternengötter / 星神の国で
  2. Lucy Guth / Festung Arkonis / 要塞アルコニス
  3. Sascha Vennemann / Fluchtpunkt Venus / 逃走地・金星
  4. Olaf Brill / Der Raumschiffsfriedhof / 宇宙船の墓場
  5. Michelle Stern / Die Kralasenin / クララセンの女
  6. Dietmar Schmidt / In der Methanhölle / メタン地獄にて
  7. Kai Hirdt / Tolcais Totenspiele / トルカイの死人ゲーム
  8. Lucy Guth / Quartams Opfer / クァルタムの献身
  9. Roman Schleifer / Totenstille / 死のしじま
  10. Dietmar Schmidt / Das Talagon / タラゴン
  11. Olaf Brill / Atlantis muss sterben! / アトランティス滅ぶべし!
  12. Ben Calvin Hary / Nekrolog / 骸詞

新銀河暦2069年。大西洋アゾレス諸島の海底ドームをアルコン人ケレン・ダ・マスガダンが購入し、テラ・アルコン植民史博物館として改装する運びとなった。彼は往時アトランの麾下にあったキルス・ダ・マスガダンの子孫。記念式典に招かれ、ドームを訪れるローダンと妻シク・ドルクスタイゲル。新生水晶共和国の顧問として多忙な日々をすごすアトランも姿を見せ、しばし歓談に興ずる旧友たち。
だが、陳列品に混じるある物体を見てアトランの表情が変わった。鎖付きの細長い卵型、活性装置に似ていなくもない〈タラゴン〉は、あるはずのない、あってはいけないもの。そしてアルコン人は、海底ドーム土台内、これまで未発見の部屋に置かれた転送ゲートからあらわれた女性――彼は「ロウェナ」と呼んだ――の凶弾に倒れる。苦しい息の下でアトランの告げた、「タラゴンをゲートの向こうへ送り返せ」という言葉にしたがい、アーチ状転送機を抜けたローダン夫妻だったが……。
実は時間転送機だったゲートを越えたふたりが漂着したのは、紀元前8000年の地球。異時間平面との接触で滅亡する数年前のアルコン植民地、アトランティスであった。

……と、こんな形でスタートしたミニシリーズ。前半6話は、現地人女性カイセイを案内人に帰還の手段を探すローダンたちと、彼らを追うアルコン女性ロウェナを中心にストーリーが展開する。
カイセイはアトランティス住民の小さな村落出身で、遺伝的に難産で母子共に亡くなる血統。幼い頃に姉が村を追われて死ぬさまを目撃し、いままた妊娠した自分も“穢れ”を忌避する村人たちにより追放され、許しをもとめ“神々”の住まいを訪ねるべくさまよっていたところにローダンたちと出会う。シクさん(ハトル人の傍系アトル人)の緑の肌、金色の文様を病気と勘違いし、勝手に共感して仲良くなる(笑)
一方で、3人を追跡するロウェナさんだが、このヒト実はゴノツァル家一門に連なる人物で、オルバナショルIII世治下で両親が処刑され、まだ幼い彼女は助命の条件として家名を捨て皇帝親衛隊クララセンの兵士となった経歴を持つ。現在はオルバナショルを打倒した水晶王子アトランに絶対の忠誠を誓う身であり、ドームにいた“アトランの贋者”を撃ったことにすら罪悪感チクチクだったりして草はえる。アトラン出征中の代行キルスを言葉巧みにあやつったり悪役ムーブをこなしつつ、水晶王子の御ためにこっそり廃棄しようとしたタラゴンをわざわざアトランティスに持ち帰ったローダンたちを許すまじと何度か襲撃するのだけど、身重のカイセイを撃てなかったり、よくクララセンやってこれたなという善人ぶりも発揮する多才さ(笑)
その過程で明らかになるのは、タラゴンがマークスがどこからか入手した“大量破壊兵器”であるという事実。一時休戦の手打ちとしてアトランが譲渡されたものだという。破壊するにもブラックホールのような高圧・高重力下でないと不可能という代物。

そして、アトランティスに出現する“灰色の小人”の軍勢。この時代のアトランに――植民アルコン人であると素性をいつわって――同行して霧セクターのマークスのもとを訪れたローダンが見たものは、メタンズを蹂躙するコバルトブルーの転子状船《輝力》だった。
コバルトブルーの転子状船は、1900話台のロボット・カイロルの乗船にはじまり、後にアラスカのものとなるサンブリ・ユラの《光力》など、コスモクラートの協力者が駆るタイプ。“灰色の小人”……要するに“グレー”だよね……はその乗員のアンドロイドたちである。ローダンもミニシリーズ〈ミッション《ソル》〉でエロイン・ブリゼルと知遇を得ている。
そしてタラゴンとは120万年前、セト・アポフィスの命をうけ局部銀河群に侵攻したガルベッシュの指揮官アムトラニクが混沌の工作員から入手した兵器〈原搬死素ネクロフォル〉だった。超知性体〈それ〉の力の集合体中心部たるタラニス――すなわち、アトランティス――で点火されるはずのものが、移送の失敗で難破していたのをマークスが収容したらしいのだが……。

後半はタラゴン回収をもくろむ《輝力》司令、ライレと同型のロボット・トルカイとの丁々発止のかけひきが続く。そして――
これまでコスモクラートのロボットは、サムカーが贋騎士イグソリアンとの関係をにおわされたくらいで、ライレやカイロルの素性は闇に包まれていた。だが、トルカイはちがう。
地球ともタラゴンとも因縁を持つ彼は、20万年前にロトロン(地球)で遺伝子実験をおこなっていたラサロ直属の部下トシクの息子――タケル人ジョシロン。彼はアトランティスの最高峰アルコンピークス頂上で、タラゴンを解きはなった。あらゆる生命を破滅へと誘うヌクレオチド・ペストが猛威を奮い、世界を死で塗りつぶしていく。力尽きる寸前、ローダンは最後の望みを、運命を乗り越え、息子を産み落としたばかりのカイセイに賭けた……。

最終話「骸詞」は8月19日発売。さあどうなる。

……以下、余談。
序盤からローダンたちに協力する、偏屈者のアルコン人科学者クァルタム・ダ・クェルターマギン。これまでクェルターマギンというと、由緒正しい御貴族様で、陰で陰謀の糸をひいているパターンばかりだったので、ちょっと新鮮(笑)
あと、途中からローダンらに同行している従僕ロボット。一時タラゴンの隠し場所にされたり苦労が絶えない“彼”はRCO型、らしい。ひょっとして、リコ(Rico)なのかな?

Posted by psytoh