ローダン赤帝3:未来の砦……だったよ、な?
私はライランド・ウォーカー。ニューヨークはマンハッタンに小ぢんまりした事務所をかまえる私立探偵だ。秘書のカルメンが今日も来客を告げる。ジョニー・ヴェールことイオアニス・ヴァレロシオスはビザンティン宮廷の宦官めいた声でやっかいごとを持ちかけるのが常だ――今日のように。
ガチニ・エメラルド……とある老貴婦人のもとから「盗まれた」とされる宝玉をとりもどすのが今回の依頼らしい。だが、警察に通報することを忌避し、現在の「保持者」もわかっているというのは、実にきなくさい。とりあえず慎重に、周辺から事情をあたってみるのがよいだろう……。
そんなとき、もうひとりの依頼人が事務所を訪れた。妙齢のご婦人は、突如消息を絶った兄を捜してほしい、と語った。
「わたくしはデボラ・ローダン。兄の名は、ペリーと申します」
時は20世紀後半のニューヨーク。なのに市街の片隅には、ドルーフがおり、ホウホムがおり……ライ・ウォーカーはガチニ・エメラルドの謎を追ううちに、それまで知らない超技術が暗闘に用いられていることを知る。秘書であり恋人でもあるカルメン・スターウッドはかどわかされ、探索をしぶる彼への脅迫材料に使われる。
廃墟同然の宇宙港……こんな巨大なものが空を飛ぶのか? 宇宙船のかたわらでホームレスのように暮らすホウホムたちとの邂逅……。
誰かの声がするようだった。
「527076の平方根は?」
「726。ですが、なぜ?」
モーロック・スマルヤ――かれはホウホムだった――のもとでガチニ・エメラルドを手に入れたウォーカーは、しかし恋人を取りもどすことはできなかった。そして、探偵はついにもうひとつの依頼の回答の場所、マンチェスターにあるローダン家の墓地にたどりつく……。
ペリー・ローダン、ハイネ社版ペーパーバックシリーズ〈赤い宇宙の帝国〉の最終巻『未来の砦』は、こんな感じで幕を上げる。というか、実はまだ半ばあたりまでしか読み進んでいなかったり。いきなり探偵物語でびっくりだが、それで終わりではない。
ライ・ウォーカーの「捜し出した」ペリー・ローダンは、この世界が現実ではなく、一種の仮想現実界〈メンタル・シンポジオン〉であることを知る。赤い帝国の女将軍イファマによって捕らえられたテラナーは、意識と魂の6次元コピーをとられ、この領域に送り込まれたのだ。コピー意識である現在の自分を、現実界のローダンのもとへ再統合するため、彼はテラニアをめざす……シンポジオンの設計者はその大都市を恣意的に削除し、再現しなかった。しかし、かつての彼もまた、何ひとつない砂漠からテラニアを生み出したのではなかったか――。
というわけで、今度はシルクロード紀行である。中国にわたったローダンは、ラマ教の聖者の予言にしたがい、小キャラバンで古都カラ・ホトへと旅立つ。灼熱の砂漠をラクダで踏破し、たどりついた遺跡でテラナーを待っていたものは。そして、メンタル・シンポジオンとは何で、シミュセンスのもたらす夢とは何が異なるのか。ガチニ・エメラルドをめぐる事件は何を意味するのか。ひそかにローダンを支援するのは、アンジュミストではないのか。
うずまく疑問の、あるものには回答を得、あるものは謎のままで、現実界に帰還したローダンは、ついに赤い帝国との最終決戦のときをむかえる……はず、なのだが。そのへんはまた近々。
まあ、とりあえず。前の巻『ドルーフォンへの鎮魂歌』で、思わずローダンをひっぱたいちゃったわって、ファラシューちゃん、それ伏線だったのかよっ(爆)
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