雷神基地
引用の域を超えてしまいそうなので、今回原文はなし。
んで、“いくつか”例を挙げるにとどめる。
■9p
ローダンと、その科学・政治・防衛スタッフは、これで一安を得たものと信じた。アンティテンポラル干満フィールドも数分後固定ではなく、時間モデュレーター投入の結果、未来界を“遊泳”していた。当面はラール人と協力者たちをふりきれたと思われたのだ。
超重族エイモントプの天才を考慮に入れるものはいなかった。パリクツァ艦隊で第二ヴェシルの地位にあるこの環境適応人は、水星にある主干満転換装置破壊の命をうけ、太陽系に侵入していた。
エイモントプは、“コボルト”物質化後に生じた予想外の事態に、じつに適切に対応した。銀河系すべての種族に畏敬される太陽系秘密情報局は失策を犯し、大執政官ローダンは未曾有の窮地に陥った……
『人類の年代記』345巻IX章から抜粋
#虚をつかれた、というのが原文の真意かと。
#抜粋の法則はWikiでもわからなかった。原語は Band 345/IX なので、3450年代の巻の9章、つまり3459年の章と、読んで読めないこともない。
■15p
「どちらへ向かうおつもりです?」
「第八惑星だ、アーセン。海王星だよ」
「どうやってそこまで? テラナーのことです。現在の混乱も、じきに収束するでしょう」
「心配するな。構造震動が味方してくれる。適当な機会が訪れるまで耐え、超光速に移行して、ローダンの部下どもがなにが起きたか理解するより早く潜伏する」
#海王星星域までいく方法を訊いているのだ。
■31p
艦長とカルトプは向かいあって座った。エイモントプの肩にはフィリル。ふたりのあいだを分厚いガラスが分かつ。副官の横の壁は赤と黄色の発光板で埋めつくされている。いま点灯しているのは、すべて赤。
ヴェシルが自分の命令と当時の状況を説明。壁のマイクロフォンが情報を拾ってポジトロニクスに伝達する。すでにあらゆるデータが詰めこまれているので、艦長の陳述は形式にすぎない。
「実際問題」と、エイモントプは討議の核心について、「ソル星系の状況は発想の転換を強いるものであった。命令を遂行することは、なんら結果をもたらさぬ自殺行為にいたっただろう」
「異議を申し立てます」と、カルトプ。
「われわれは、テラナーが第二の恒星を持ちこんだのを発見した。その理由はまだ解明できていない。とはいえ、この事実は異常かつ重要であり、そこから生ずる義務はただふたつ。第一、ローダンのもくろみを可及的すみやかに探りだすこと。第二、そのうえでソル星系を脱出し、銀河系第一ヘトランに報告すること。ここでなにがおこなわれているかを、レティクロンは知っておくべきだから」
「太陽系から離脱する手段がないではありませんか」と、カルトプがするどく指摘。「アンティテンポラル干満フィールドに包まれており、したがってあなたもこの星系に閉じこめられている」
「干満ロックが存在するはずという科学者たちの報告は、そちらも承知しているだろう。傍受した通信内容からも、その存在は明らかだ。テラナーたちは、まもなく特別作戦から帰還する予定のグッキーめが通過する、航程通路とやらを口にしていた。予定表の第一段階をクリアしたら、その時間ロックを抜けて太陽系を脱出すればよろしい」
赤い発光板の大半が消灯する。かわりに次々と黄色灯が輝きだす。カルトプは青ざめた。
「副官の行動については、氏族法に基づき、叛乱とみなした。衆目の前での議論を強いる試みは、艦内の士気を脅かした。わたしの言うべきことは、以上だ」
エイモントプは副官を見やって、
「さ、きみの番だ」
「第二ヴェシルのお言葉にはむかって、なんの意味がありましょう」
「もっと早く、それを頭にたたき込んでおくべきだったな」
カルトプの横の壁は、いまや黄一色だった。
副官はそれをちらりと一瞥しただけ。
「ポジ陪審は被告に、作戦を脅かした罪により死刑を宣告します」天井にかくされたスピーカーから、やわらかな女性の声が響いた。「被告は惑星地表への追放処分となります」
「だ、そうだ、カルトプ」
「補足事項として」と、ポジトロニクスの合成音声はつづけて、「パリクツァ艦隊第二ヴェシルの了承があれば、被告にはチャンスが与えられます」
「聞かせてくれ」と、エイモントプ。
「太陽系第一惑星への偵察船を派遣する必要がありますが、当該エリアの軍事的状況に鑑みて、コマンドの生還率はきわめて低いものとみなされます。また、これを率いることにより、カルトプは本来の命令の一部なりとも果たす可能性を得られます」
「ポジトロニクスが皮肉を言えるとは知らなんだ」エイモントプは立ちあがって、「よかろう。白色矮星に肉薄するコマンドをカルトプに指揮させる。われわれが早急に必要とする情報を手にいれてこい」
「ありがとうございます」と、副官。「ご信頼いただける証をお目にかけましょう」
「詳細な判決理由はご入用ですか?」ポジトロニクスがたずねる。
「いや、けっこうだ!」
「では省略します。カルトプも了解したと思われますし」
「ああ、している」
#Posijur は Positronische Jury ……「ポジトロン陪審員」と読むべきだろう。無数のランプ(発光板)が票決。有罪(黄色)の数が増えていくのが、原文を見るとわかる。
#セリフを誰が言っているかがめちゃくちゃ。カルトプを「わたしの将校」と言ってるんだから、そのセリフはエイモントプ。最後のセリフも、ich=カルトプ。
#ま、この裁判、出来レースみたいで、異議アリを聞いてもらえないよーだが。
■80P
「拙速は禁止だ、諸君。自分は安全だとも思うな。テラナーも闘うことを知っているのだと、われわれ、またしても肌で感じたばかりなのだから。なにが起きるか予測がつかない。ゆえに、白色矮星に慎重に接近するのではなく、断固として、全力で打って出るのだ。あの星をつかむ諸君の勇猛さに、われわれの成功はかかっている」
#これだと科学者への訓辞つーより決死隊を送り出すみたいだけど。
■82p
「わたしはちょっとくつろいでいただけだ。退屈というわけじゃない」先に進もうとしていたローダンは、ネズミ=ビーバーへと向きなおって、「きみ、駐車禁止をくらわなかったのか?」
「ああ、グライダーがね」
「わたしの言いたいことはわかるだろう。管理局で聞かされたぞ、しばらくきみが顔を見せなければありがたい、と」
「ちょっと恐竜を逆立ちさせたくらいだよ? やりすぎだなんて言わないでしょ、ペリー?」
「とんでもないぞ、ちび。四百トンもある生物にそんなアクロバットを無理強いしたら、それだけで……」
「万事無事だったってば。そりゃ恐竜はちょっぴり咳きこんだかもしれないけど、そのあとはぴんしゃんしてたんだから」
「管理局では、もう少しちがった話を耳にしたがね」
「ペリーってば!」
無邪気な瞳で見あげてみせたが、それにひっかかるほどグッキーのことを知らないローダンではなかった。長々と論議する気もなかったので、「ちょっとでも苦情が出たら消えてもらうぞ、グッキー。いいな?」
「わかってたんだよ、あなたのとこなら退屈しないってさ、ペリー」
#駐車禁止 Parkverbot は、流れからすると「出入禁止」くらいの意味か。
#現在完了形なので、逆立ちさせたのは過去の実話。
#ここはたぶん、笑うところなのだ。
以上ぜんぶ試訳。ま、なんだ。「その翻訳ソフトはニセモノだ。食べられないよ」(食べるな
他にも、段落まるごと意味がちがうとか、多すぎる。あるいは日本語化してからいじりすぎなのか。こうもちがうと超訳ともいえまい。
翻訳ソフトを使用しているというのは噂だが、もし事実だとしたら教育が足りてない。事実でなかったら……
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