テラのカウントダウン -15-
今回は、ちょっとつまんない数のお話。
アポル・デトロイヤー少尉はシガ人で、100人の特別コマンドを率いている。総勢100名である。ここ重要。
■252p
ハヤカワ版:
部隊は四人ひと組で、同数のプラズマ容器を携行することにした。デトロイヤーが先頭に立ち、地下深くに通じるパイプを降りはじめる。原文:
Daran mußte Detroyer denken, als er mit einer Gruppe von vier Mann und ebenso vielen Plasmabehältern einen senkrecht in die Teife führenden Belüftungsschaft hinunterschwebte.
試訳:
それぞれがプラズマ容器を携えた部下四名のグループといっしょに地下深くへ通じる空調シャフトを降下しながら、デトロイヤーはそのことを思いかえさずにはいられなかった。
#前の段落のワリンジャーによる解説は、実は過去完了形。「ワリンジャー教授は~と説明したものである。」くらいが適当かと。レクチャーが終わって作戦はすでにはじまっている。
■254p
ハヤカワ版:
四名ひと組で二十グループにわかれた部隊は、こうしたセクションをたどって、問題のプラズマ容器に到達することになっていた。かなりの遠まわりになるが、この際しかたない。原文:
So kam es, daß sich Detroyers Einsatzgruppe, in zwanzig Gruppen unterteilt, auf Umwegen zu dem Zentralplasma durchschlagen müßte, das Nathens Bio-Gehirn darstellte.
試訳:
したがって、二十のグループにわかれたデトロイヤーの部隊は、ネーサンの生体脳である中央プラズマまでかなりの迂回路をたどらなければならないということ。
#前の段落も、「エネルギー供給を絶たれたセクションを優先的に利用することになっている。病んだプラズマがコントロールしている場所はなるべく避けたい。」である。
#ところで、「四人ひと組」という原語はないわけだが、デトロイヤーたちは何名で行動していただろう?
■255p
ハヤカワ版:
部隊はさらにパイプ網を進み、ようやく目標に到達した。先頭は三グループ、十二名からなる。原文:
Detroyer legte Kilometer um Kilometer im Röhrensystem zurück – dann war er endlich am Ziel. Drei Einsatzgruppen von zusammen fünfzehn Mann waren schon vor ihm eingetroffen.
試訳:
デトロイヤーは通風管内を一キロまた一キロとこなし――ようやく目標に到達した。すでに三グループ、総勢十五名が先着していた。
#最初にまちがえた数字にこだわって、「15人」と明記されているのに3名どこかへやってしまったわけだ。
#余談だが、次の段落は、先着した3グループがすでに仕事にとりかかっていた様子を描写している。これも過去完了形の文章。
冒頭で「100人の特別コマンド」と描写されている。100人を20で割れば、1グループあたり5名のはず。4×20=80で、20名の消息が不明なのを、伏線とでも解釈したのだろうか。少なくとも「3グループ15名」と出てきたあたりで、過去をふりかえってみれば答えはわかりそうなものである。
……お願いだから、数と格と時制くらいは、ちゃんと訳しておくんなまし。
以下、余録。
■260p
ハヤカワ版:
全太陽系人類がローダンの計画に賛成するまで、もう長くはかからないだろう。実際、過激派政党の反政府プロパガンダはすっかり下火になっていた。原文:
Noch waren lange nicht alle mit seine Fluchtplänen einverstanden; ja, die Opposition forcierte ihre Hetzkampagne gegen ihn mehr als je zuvor.
試訳:
皆がかれの逃走計画に賛同してくれたなどとは、まだとうてい言えない。実際、野党の反政府キャンペーンの勢いはかつてないほどだ。
#次の段落、原文は aber ではじまる。反対は根強いけれど……である。接続詞まで読めないとは、思いたくないのだが?
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません