素朴な疑問
――ところで、グラウンツァーって何頭いたんだっけ?
発端は、素朴な疑問だった。
頬杖ついて、やる気なさそーにアトランが耳を傾けていたのが171頭めで……と、本来、読了したばかりでおぼえていてしかるべき私に、懇切丁寧に解説してくれるマガン。いつもすまないねえ(笑)
そして、アトランから発する強力なインパルスの話になった。いや、あれはきっと原文自体がImpulsなんでしょ? ……と、原書を開いて。問題は、そこじゃなかったのだ。
■238p
ハヤカワ版:
「付帯意識だ!」と、大提督は小声で、「この動物が話すのなら、レムール語にちがいない」
〈われわれの言語に堪能なのだな!〉と、グラウンツァーの意識に埋めこまれた、付帯意識がいってくる。付帯脳が話しかけるのと同じ感覚だ。〈わたしはこの動物に影響をあたえている。すでにおわかりだろうが〉原文:
“Das ist der Extrasinn!” meinte Atlan leise. “Wenn dieses Tier zu sprechen versucht, dann wird es die lemurische Sprache sein.”
Du beherrscht diese Sprache recht gut! sagte der Extrasinn. Ich bin es, der das Tier beeinflußt! Kein Zweifel!
試訳:
「付帯脳のせいか!」と、アトランがつぶやいた。「この動物がしゃべるとしたら、レムール語のはずだな」
〈レムール語なら堪能だろう〉と、付帯脳がいってくる。〈この動物に影響をあたえているのは、わたしだ! まちがいない!〉
#付帯脳の一人称が“わたし”だったかは、ちょっと自信がない。
この文章、原文もわかりづらいが、「グラウンツァーは付帯脳の持ち主をレムール人(の末裔)と認識した」というのが、確定する事実。グラウンツァーが付帯意識を持っているというのは、この文章を読みちがえた結果生じたウソ設定である。
この後、アトランが苦労して聞取調査をおこなうわけだが、これは“付帯意識”と会話しているわけではなく、グランツァーが(意味は理解しないまま)口伝しているレムール語を記録している。訳文にある、付帯意識云々はすべて勝手な追加文である。
だから、自分の創作にひきずられるなと何度も(ry
出典:341巻「生まれざる者の恐怖」 ハンス・クナイフェル
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