365巻『ゼロ守護者』雑感
ハヤカワ版365巻『ゼロ守護者』である。著者は前半「ゼロ守護者」がエーヴェルス、後半「虚無への通廊」がフォルツ。訳者は嶋田洋一さん。
今月は、前後編通して、闇のスペシャリスト・プィ救出作戦をめぐる顛末である。
前半「ゼロ守護者」においては、ゼロ守護者ミトロンを中心に、プィを餌に異人たちを罠にかけようとするツグマーコン人サイドと、トラップの可能性を知りつつ惑星レイニスへと派遣された救出コマンドのグッキーらテラナー・サイドとでストーリーが進行する。メントロ・コスムが息子に説教するのを見たローダンが苦笑するあたりはご愛嬌。
表題でもある、ツグマーコン人の権力者、ゼロ守護者の皆さん。富裕層にすりすりして権力のバックアップをさせるのは、まあ、わからないではないんだけど。独裁……つーか寡頭専制国家だけに、その富を収奪して権力者自身が富裕化するんじゃないのかなあ。だいたい、後継に指名されるのって、もともと財力あるやつなわけだし。どんどん富が集中していきそうなものである。
また今回、分子変形能力者=MVが、いちおう訳文に出てきた。うーん。著者がエーヴェルスだし、ドルシュバー=ルウルスが外来生物であること、元々は1回しか変身できなかったことなど、それっぽい設定も出てきてはいるんだけど。ギュス・フォールベーラー(マタールやナポレオンの種族)とは別物じゃないかにゃあ。
後半は、ゼロ守護者後継候補ジャットンによってさらわれたプィを回収するため、ツグマーコン人はゼロ守護者サプーンの視点から策謀を練り、またテラナー側ではシェーデレーアを中心とした《マリアッチ》の面々が、グライコ人の銀河へ通じる次元トンネルへと突入を図る。しかし、その艦上ではイホ・トロトにとある異変が生じていた……。
さて、今回は原書がある(笑)のだが、一番の難物“扇”については別項に譲るとして。なんとゆーか、訳語の統一がしきれてないような感が否めない。Sextadim-Halbspur が、セクスタディム半シュプールだったり六次元半シュプールだったりはては同義の用語であるハイパーセクスタ半シュプールに置き換わっていたり……。ダッカルディムバロンを「ダッカル次元風船」としたのだから、「ダッカルディムの泡」とかやめようよ、わかりづらい。
#「ゼロ守護者センター」が「執政官庁舎」になってたりね……。せめて執政府庁舎か執政官公邸じゃね?
来年から月2回刊行という、某シリーズの頓挫をうけた僥倖が告知されたわけだが、正直、心配である。よけいなお世話ではあるけど、心配だよなぁ。
表紙イラストも、別のイラストレーターとかみつけるよりコラージュの方が楽チンだーとかいう結論に達しないことを祈るばかり。
とりあえず、来月は《ソル》のための特殊エンジン窃盗大作戦と――アフィリカー最大(というか唯一の)大物、トレヴォー・カサルの登場である。
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