新たな時代の夜明けに

ドイツSF

ローダンではないが、大元の出版社がおなじPabel-Moewigということで、ファンプロからのヘフト合本版ペーパーバックの紹介である。今回は、ファンタジー物だ。rlmdi.の刊行物をすべてお持ちという奇特な方なら、お手元に『ミュトール・ノート』があると思う。アレである。

ミュトール(Mythor)は、1980年から1985年にかけてPabel社から刊行された、ドイツじゃあ2番目のファンタジー・ヘフト。南端を〈影地帯〉なる暗黒の壁で封鎖された世界ゴルガンを舞台に、光の神々の遺産、彗星として顕現する〈光の使徒〉の加護をうけ、闇の軍勢と戦う運命を背負って生まれた〈彗星の息子〉ことミュトールの冒険を描く。Pabelからなので、作家陣にはローダン関係でよく見る名前がごろごろしている。
全192話が出版されたが、赤字シリーズとして急遽打ち切りが決定したため、199話で完結予定だった「悪夢の書」サイクルがすっげぇいいところでぶち切れている。残念しごく。また、2002年頃に、Weltbild社からヘフト3話ごとを1冊にまとめたハードカヴァー版も出版されたが、第1サイクル「ゴルガン」分、17冊(51話)で刊行を終了している。

さて、今回ファンプロから刊行されるのは、「シャドウランド」サイクルと呼ばれるヘフト10話分。すでに第1巻『新たな時代の夜明けに』は(8月予定がようやく?)発売ずみで、以降、各2話を1冊(@8ユーロ)にして、隔月刊行予定……なのだが。

この10話(下にタイトルを掲載)、上述した「悪夢の書」サイクルの冒頭部分なんである。光と闇の勢力の大決戦が、〈光の使徒〉のもたらした天変地異によって盛大に先送りされ、変わり果てた世界で両勢力とも地歩を築くところからやりなおし――という、週刊漫画のテコ入れのような事態(笑)
そして、一番の問題は、主人公ミュトールがすべての記憶をうしなっていること。しかもこの記憶喪失、次のサイクル「ドラゴンランド」にならないと解決しないのだっ!(火暴)
基本、記憶をなくしたミュトールが狩人の娘イルファによって発見されるところから、旧〈影地帯〉の一部をゆがめて形成された〈恐怖のゾーン〉を脱出するところまでと、起承転結はなりたつはずだし、編集も入るという。とはいえ、いまいち意図のよくわからない話ではあるのだった。ここだけめっちゃ人気あったとかいわないよなあ(笑)

収録ヘフト・タイトル:

  1. Hans Kneifel / Am Anfang war das Chaos
    はじまりは渾沌
  2. Hugh Walker / Fluch der Hestande
    ヘスタンデの呪い
  3. Peter Terrid / Unabitt, der Henker
    刑吏ウナビット
  4. Hubert Haensel / Die Himmelsfestung
    天空の城塞
  5. Horst Hoffmann / Wald der Masken
    仮面の森
  6. Horst Hoffmann / Die Trugburg
    まやかしの城
  7. Hans Kneifel / Das Spiel der Götter
    神々の戯れ
  8. Hugh Walker / Geist der Aegyr
    エーギルの魂
  9. Peter Terrid / In den Klüften der Unterwelt
    地下界の亀裂で
  10. Hubert Haensel / Der Herr des Chaos
    渾沌の主人

■FanPro: Schattenland (リンク切れ)

余談:1巻目のタイトル Am Morgen einer neuen Zeit は、140話刊行当時の、広告キャッチコピーである。うわ、なんかおもしろそう、と食指が動いたものである。懐かしや。

Posted by psytoh