まじ泣けてきた……

ハヤカワ版, 誤訳

ラスヴィッツ賞をディンフォに丸投げしているあたり、やる気と時間の足りてないことが推察していただけそうな昨今。ハヤカワ版で、記念巻というべき400巻『テルムの女帝』が刊行された。された……んだけど……。
ぶっちゃけ、「内容よりも月2巻刊行」なのがひしひしと感じられる翻訳だった。グインの方もたいがいだが、そろそろこっちも本気で解脱せにゃならん時機やもしれぬ。

本題である「テルムの女帝」は、また後日として。
前半「テラとの別離」冒頭部と、某掲示板で誰かが書いてた部分について:

ハヤカワ版:(p11)
「ずっと疑問なのだが、なぜそんなことをするのだろう?」と、カウク。
「どこが疑問なんだ? 敵がもう、こちらのかくれ場を知っているとでも思うのか?」
「そうだ。地球に抵抗組織があることはわかっている。旧政府の中心地がここにあったことをしめす情報にも、ことかかないはず。われわれがここにかくれていることは、とっくに気づいているにちがいない」
「(中略)ここにきて手段を変更したのは、われわれの抵抗が長びくと判断したからかもしれない」

原文:
“Ich frage mich schon die ganze Zeit über, warum sie solange dazu brauchen”, sagte er.
“Wieso? Hattest du erwartet daß sie uns früher auf die Schliche kommen würden?”
“Natürlich”, antwortete Kauk. “Sie wissen, daß es auf der Erde eine Widerstandsgruppe gibt. Sie können überall Informationen finden, daß das Kontrollzentrum der früheren Regierung in dieser Gegend liegt. Also müßten sie schon längst auf den Gedanken gekommen sein, daß wir hier untergekrochen sind.”
” (…) Erst jetzt greifen sie zu anderen Methoden. Sie hatten nicht damit gerechnet, daß wir so lange Widerstand leisten könnten.”

試訳:
「ずっと疑問だったんだが、むしろどうしてこんなに時間がかかったんだろう?」
「なんだって? もっと早期に看破されるのを予想してたっていうのか?」
「もちろん。地球に抵抗組織があるのはわかってる。旧政府のコントロール・センターがこのへんだったという情報ならそこらじゅうでみつかる。われわれがここに隠れていると、とっくに考えてなきゃおかしい」
「(中略)ここにきて、ようやく別の手段を講じてきた。われわれがこれほど長期にわたって抵抗するとは思ってもみなかったのでしょう」

テラの神経中枢(インペリウム=アルファ近辺)で捜索がおこなわれないのはなぜかなー、というかねての疑問、である。 続く後続の文章がほぼ原意通りなので騙されるが、索敵自体を不思議がるカウク、相当おかしい。
まあ、それだけフルクースが小陛下だよりで、ルーチンワークしかしてないってことだが。

ハヤカワ版:(p23)
「五十体のK=2が駐屯していた地域ならわかります。地区までは不明ですが」

原文:
“Wenn es sich bei den fünfzig Ka-zwos um die gesamte Streitmacht des Standorts gehandelt hat, dann kann dieser Standort nur eine Präfektur, nicht aber ein Bezirksamt gewesen sein”, erklärte er.

試訳:
「全戦力でK=2五十体というなら、地域ではなく、地区ですね」

中国東部、というネタ(の一部)から絞り込んでいくのであって、知っているわけではない。
ここはあくまで戦力と管轄エリアの規模の相関関係の話。邦訳が正しいなら、話の流れは、50体が常駐していた地区は、どこそこ……となるはずだし。

直訳すると「ただの県ですね、区じゃありません」なんだけど。日本の感覚とちがうから……。

■100p

ハヤカワ版:(p100)
周囲の恒星のスペクトルを観測し、女帝の研究員が“たぶん惑星あり”と分類する恒星を発見。それはテラナーの航宙士が数世紀前から知っている星系だった。

原文:
Er untersuchte die Sterne der näheren Umgebung auf ihre spektrale Beschaffenheit. Die Kriterien, nach denen der Forscher der Kaiserin einen Sternen als “wahrscheinlich planetenbesitzend” einstufte, waren dieselben, die auch die terranische Raumfahrt schon seit Jahrhunderten kannte.

試訳:
周囲の恒星のスペクトルを分析。女帝の研究者が“たぶん惑星あり”と判断する基準は、テラナーの宙航士が数世紀来知っているものと同一だった。

未知恒星系だから、命名とかするんじゃないかなあ。

……こっちは全文照合なんてしてる余裕ないし。冒頭部しかないのは、ぶっちゃけた話、そっから先を読んでないからである。
800話は、過去、訳した経験(と、恥ずかしい過去もとい翻訳原稿)があるから、近々に、ちゃんとしたカタチでやるつもり。たぶん、最後の照合になるだろうし。
5/19 原文くらいつけなはれというご指摘に対応
2019/06/21 ハヤカワ版の抜粋を追加&説明文を若干修正

Posted by psytoh