テル女:用語チェック (3)

ハヤカワ版, 誤訳

最後の訳語チェックとなる。
過去編は複数種族・幾世代にもわたるが、各々が短いから、こんなもんじゃろ。

■ケルシル人 die Kelsiren

男性単数が Kelsire 、女性単数(複数)で Kelsirin(nen) 、複数が Kelsiren 。男性複数で Kelsirer と表記することもあるようだ。タイプミスかもだが(笑)
他方の、歌声で船乗りを惑わす女怪サイレン(セイレーン、シレーヌ他)はドイツ語でジレーネ Sirene(n)。誘引信号と歌声、-siren と Sirene 、フォルツがわざと似せたことは想像に難くないが、セイレーンまで一足飛びだと、どうだろう。別にテラナーがつけた種族名じゃないのだ。

■テルムの女帝 die Kaiserin von Therm

ケルシル人が母権制だから「女」帝、なのは当然として。
唐突に出てきた「テルム」だが、おなじ綴りの「サーム」は熱量単位。昔のファンジンだと「熱き女帝」とか書いてあったものもあった……ように記憶してるんだけど。火力発電所もサーマルだし、ラテン語の thermae romae は「ローマの浴場(温泉)」。
一方、それらの語源であるギリシア語のテルモス thermos (熱)は、アナグラムが「母(たち)」 mothers になるそうな。ひょっとしたらそのへんも関係してるのかなあ。
#まあ〈温泉女帝〉だけはナシの方向で(笑)

■ビョー・ブライスコル Bjo Breiskoll
■ラレーナ・ブライスコル Lareena Breiskoll

ちなみにどっちも、ドイツ語読み。
母者はラリーナさんでもよかったんじゃないかと思うのだが……。マブデンの大公妃ぢゃないぞ?w (あれはRhalina)
息子の名前については、どこかで書いた気もするが、「猫(ビョウ)」なんじゃなかろうかと勝手に推測していたりする。いや、もはや妄想か(笑)

■その他
ミトラ Mitra
ヴォントラ Vontra
モイクリナ Moykrina
ドナティア Dnathia
バルロ Barlo
ヴェヤ Veya
誘引信号 Locksignale
聖杯の母 die Gralsmutter
聖杯の娘 die Gralstochter
プロニル ein Plonyr
クジョの樹 Kujo-Baum
チョールクス die Choolks
ホプザアル Hopzaar
ゲルマイテル Germaiter
クレノホ Crenoch
ルグ=プレ Lugh-Pure

誘引信号は、アンコウ等の「誘引突起」から。これを「誘惑~」としたのはサイレンの歌声のイメージだろう。
ちょっと気になったのは、英語読みの進行度。以前は、バアロル、のように、母音が並ぶときの表記がマニュアル化されていたようだが、ラレエナ、ホプザールと、いまいち統一感がないような。訳者間では訳語を共有しても、編者さんには伝わらないのかな、現体制。
ゲルマイテルは、名前が抹消された哀れな副官のひとり(笑)
ルグ=プレは……これもテラ名(英語)じゃないんだけどねぇ。

というわけで、本編照合につづく。

Posted by psytoh