ファンタスティーク大賞2015年受賞作一覧

ドイツSF

昨10月17日、ファンタスティーク大賞公式サイトにて発表された。同日付け、フランクフルト書籍見本市でのブーフメッセコン内にて授賞式がとりおこなわれた……はずである。
2014年にドイツ国内で初版が刊行された作品が対象。

長編部門 Bester deutschsprachiger Roman:

1. Bernd Perplies / Imperium der Drachen – Das Blut des Schwarzen Löwen
      / 竜の帝国――黒獅子の血

2. Ann-Kathrin Karschnick / Phoenix – Erbe des Feuers / フェニックス――炎の遺産
3. Henning Mützlitz & Christian Kopp / Wächter der letzten Pforte / 最後の門の番人
4. Stephanie Linnhe / Herz aus Grün und Silber / 銀と緑の心臓
5. M. H. Steinmetz / Totes Land 1 – Ausnahmezustand / 死せる国1――戒厳令

受賞作『黒獅子の血』は貴種流離譚?になるのだろうか。捨て子のイオランは、ある村の漁師の息子として育つ。しかし、彼が成年に達しようとする頃、村は王の兵士たちに襲撃され壊滅。謎の魔術師アラストートに助けられたイオランは、自分のほんとうの両親もまた、王によって殺されたと聞かされるが……。
主人公の出生の秘密とか、魔術師に聞かされた以上の裏があるらしく、また徒手空拳のイオランがいかにして復讐をなしとげるのか。一方、本国ドイツでは今年7月に続編 Kampf um Aidranon が刊行され、帝国にかかる“竜の呪い”とか、帝国を牛耳る元老院とか神祇官との確執とか、そーいった話になる模様。
作者ベルント・ペルプリースは1977年生まれ、ファンタジー畑の人で、2008年のデビュー作からファンタスティーク大賞の新人部門にノミネートされたり、キャリアこそ短いが、評価は高いみたい。あと、近年はローダンNEOとか、実はローダン・ヘフト本編でも執筆していたり。

短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:

1. Vanessa Kaiser & Thomas Lohwasser / Der letzte Gast / 最後の客
2. Stefanie Altmeyer / Quentin & Co. / クエンティン・アンド・カンパニー
3. Susanne O’Connell / Next Level / ネクスト・レベル
4. Philipp Bobrowski & Claudia Toman / Sea / 海
5. Nikolaj Kohler / Der Schatten der Provence / プロヴァンスの影

「最後の客」は、両作家が編者をつとめたホラー・アンソロジー『暗黒時間(Dunkle Stunden』の末尾を飾る掌編。残念ながら内容はわからなかったが、同時収録の Andreas Gruber の作品がおもしろそうで、思わずポチってしまった。いや、だって、ウィーン在住の実用書作家が新作キャンペーンのために訪日する「Amazon.jp」デスよ?(笑)

海外作品部門 Bester internationaler Roman:

1. Neil Gaiman / Der Ozean am Ende der Straße / The Ocean at the End of the Lane
      / 通りの果ての大洋

2. Andy Weir / Der Marsianer / The Martian / 火星の人
3. Trudi Canavan / Die Magie der Tausend Welten – Die Begabte / Thief’s Magic
      / シーフの魔法 (ミレニアムズ・ルール1)
4. Ben Aaronovitch / Der böse Ort / Broken Homes / 空中庭園の魔術師
5. Brandon Sanderson / Die Sturmlicht-Chroniken 3 – Die Worte des Lichts
      / Words of Radiance / 光放つ言葉 独語版は2分冊の前半
6. Anthony Ryan / Rabenschatten 1 – Das Lied des Blutes / Blood Song
      / ブラッド・ソング (Raven’s Shadow 1)

今回は意外と邦訳が少ない……つーか、シリーズ物が多いうえに、日本・ドイツでそれぞれ分冊形式がちがうとか、いやーんである。
あと、サンダーソンの作品は『王の道』(邦訳は3分冊)の続編にあたるのだが、シリーズ名は掲載されてないのかな? >ハヤカワSF

新人部門 Bestes deutschsprachiges Romandebüt:

1. Silke M. Meyer / Lux & Umbra 1 – Der Pfad der schwarzen Perle
      / ルクスとアンブラ1――黒真珠の小径

2. Alex Jahnke
      / Neues aus Neuschwabenland: Aus den Tagebüchern des Führers (Adjutanten)
      / ニュース・フロム・ノイシュヴァーベンラント:総統(補佐官)日誌
3. Susanne O’Connell / Die Prophezeiung der Volturne / ヴァルチャー族の予言
4. Anette Kannenberg / Das Mondmalheur / 月難
5. Veronika Lackerbauer / Burgfried / 望楼

『ルクスとアンブラ』――ふたつの世界、三人の恋人、ひとつの予言。息子マティスとひっそり暮らすシャーロットのもとを訪れるふたりの異世界人……。世界の命運を賭けた予言の成就は、ひとりシャーロットに託された! みたいな。アマゾンの書評でもかなり評判がいい……のだが。

個人的には、第2席の『総統(補佐官)日誌』がツボでw
第二次大戦後、南極大陸に潜伏したナチス残党。かの地にすでに着陸していた、アルデバランからのエイリアンと接触、謎の宇宙的パワー《ヴリル》でエネルギー問題解決! でもメシは変わらずまずい!
第三帝国の野望はとうに忘却のかなた、退屈や後継問題などに悩まされつつ、日々を送っていたコロニーで、《ヴリル》がからむかもしれない殺人事件が発生した――とかそんなことを日記形式でつらつらと書き連ねているとか。表紙も、南極でUFOをバックに、ペンギンと並んでポーズを決めた軍服っぽい女性(ただしダイブご高齢)という代物である。
いやー、読んでみたいよーな。いざ読んでみたら笑いのツボがズレててしょんぼりのよーな。
どっちかなw

■公式:Deutscher Phantastik Preis

Posted by psytoh