クルト・ラスヴィッツ賞2014ノミネート作品発表
ネタはあるにはあるのだが、いろいろ口実をつけてサボっているうちに、去年のドイツSF大賞やファンタスティーク大賞についてはd-infoへ丸投げになってしまった。
ローダン関連でも小ネタはあるので、おいおい更新していきたい。
さて、今年のクルト・ラスヴィッツ賞のノミネート作品が3月23日付けで公表された。主な部門は、以下の通りとなっている。
※5/5修正 Das Dickicht はVilmナンバリングとしては3巻。
■長編部門 Bester deutschsprachiger SF-Roman:
Dirk van den Boom / Kaiserkrieger / 皇帝の戦士たち (第1サイクル6話)
Dirk van den Boom / Eine Reise alter Helden
/ いにしえの英雄たちの旅路 (『第九次拡張(D9E)』第1巻)
Matthias Falke / Bran / ブラン
Frank W. Haubold / Das Todes-Labyrinth / 死の迷宮 (『神々の黄昏』第2巻)
Wolfgang Jeschke / Dschiheads / ジヘッズ
Claudia Kern / Homo Sapiens 404 / ホモ・サピエンス404 (第1部6話)
Georg Klein/ Die Zukunft des Mars / 火星の未来
Karsten Kruschel / Das Dickicht / 藪 (『Vilm』第3巻)
Uwe Post / SchrottT / スクラップT
Hannes Stein / Der Komet / 彗星
今回はe-book形式で連作だったものを一冊相当に考えたものが2編ほど。
『皇帝の戦士たち』第1話「到着」は、第一次世界大戦が勃発する前夜、ヴィルヘルムスハーヴェンを出航した軽巡洋艦ザールブリュッケン号が、ポルトガル近海で奇妙な現象にまきこまれ、1500年昔の地中海に漂着したところからはじまる。西暦378年、ゲルマン民族の大移動に伴い、西ローマ帝国が傾きはじめた時代である。皇帝の精兵たる彼らは、自らの存在意義を、当代皇帝のために闘うことに見いだしていく……。講●社の漫画で似たよーな設定みたよーな、とか、ドイツ人がラテン人のためにゲルマン人と戦うとかいーのだろーか、とか思わないではないのだが(笑)
一方の、ローダン・シリーズにもゲスト参加しているクローディア・ケルンの『ホモ・サピエンス404』は近未来もの。タイトルは意訳すると、『人類が見当たりません』……エイリアンの技術を導入し、太陽系内にコロニーを気づいた人類であるが、未知のウィルスが蔓延し、地球はゾンビーの世界と化してしまう。太陽系はエイリアンによって隔離され、脱出に成功したわずかばかりの人々は、あてどない放浪者となることを余儀なくされる。そのなかに、廃材置場からひっぱりだされた宇宙船《ミシマ》の人々も含まれていた。彼らは、自分たちがひょっとしたら人類最後の希望かもしれないことを、まだ知らない――。すでに第2部も5話まで刊行済みで、(たぶん第1部第1話で乗り換えると思われる)宇宙船《T.S.エリオット》の旅路は、エイリアンとの紛争、ウィルスの秘密、そして乗員内の確執が絡みあい、困難極まりないものとなっている……みたい。
電子出版の普及にともない、出版形態も様変わりしつつある。今後は、こういう事例も増えていくのだろう。あー……まあ、日本の週刊漫画誌→コミックスみたいなもんか?
その他作品については、機会をみつけて、また後日。
■短編部門 Beste deutschsprachige SF-Erzählung:
Marcus Hammerschmitt / Im Krankenparlament / 罹疾議会
Thorsten Küper / Grosvenors Räderwerk / グロスヴェノルの歯車じかけ
Michael Marrak / Coen Sloterdykes diametral levitierendes Chronoversum
/ コーエン・スロッターダイクの正対して浮遊する時間宇宙
Frank Neugebauer / Milch für den Schlangenkönig / 蛇王に捧ぐ乳
Erik Simon / Der Gesang vom Stierkampf / 闘牛の歌
Norbert Stöbe / Rette mich / ヘルプ・ミー
Merlin Thomas / Operation Heal / 癒し作戦
一方、短編部門は、近年多かった各種アンソロジーからのノミネートがほとんど見られない……のは、アンソロジーの出版自体が減っているからなのか。
■海外作品部門 Bestes ausländisches Werk:
Paolo Bacigalupi / Versunkene Städte / 溺れた街々 (The Drowned Cities)
Terry Pratchett & Stephen Baxter / Die lange Erde / 悠久の地球 (The Long Earth)
Rob Reid / Galaxy Tunes® / ギャラクシー・チューン® (Year Zero)
Kim Stanley Robinson / 2312 / 2312年 (2312)
Jo Walton / In einer anderen Welt / 図書室の魔法 (Among Others)
そして海外部門、今回は本邦既訳のものがみつからなかった。『ねじまき少女』のヒトの『溺れた街々』あたりはそろそろ邦訳出てもいい頃合いな気もするけど。基本、どれもアメリカSFなのでよくわかんないや(ヲヒ
※4/24修正 Among Others の翻訳は4/30に創元から出版予定でした。
■公式サイト:Kurd Laßwitz Preis
ディスカッション
コメント一覧
> ドイツ人がラテン人のためにゲルマン人と戦うとかいーのだろーか、とか思わないではないのだが(笑)
昔の「戦国自衛隊」を思い出しました(汗)。最期は軽巡を自沈させるとか……。
> タイトルは意訳すると、『人類が見当たりません』……
こちらは昔のジョン・ヴァーリイの作品を連想。SFマガジンの連載を単行本にするとか、そんな感じの出版形態なのでしょうか。
ああ、なんだかおひさしゅう。あっちの掲示板が息してないですからね……(^^;
わたしは『ジパング』を連想したのですが、弾薬燃料補給とかとうてい不可能そうなあたり『戦国自衛隊』だよねー、とマガンにつっこまれました。
でも彼らが西ローマ帝国の防壁になっちゃうと、現在時のヨーロッパとか成立しませんよねー。まあ、キリスト教は国教になった後かもしれませんが……。