フルロックの聖域 -2- 後編

ハヤカワ版, 誤訳

2章後半は、思ったほど多くない。代わりに、印級のものがほとんどだったりする。

■32p

ハヤカワ版:
ステーションも、地上施設か宇宙船か、まだはっきりしない。しかし、なにかがあるとしたら、地中だろう。

原文:
Auch Einzelheiten einer Station oder eines Riesenschiffs waren nicht zu rekennen. Wenn es überhaupt etwas gab, lag es unter dem Boden.

試訳:
ステーションだか巨大宇宙船だかの詳細も依然不明。何があるにせよ、地中である。
#ステーションでも宇宙船でもどっちでもいいのだ。何かあれば。

■33p

ハヤカワ版:
着陸脚の皿状先端が、でこぼこした地表でも艇体を水平にたもつ。

原文:
Seine Landebeine mit den großen flachen Tellern paßten sich den Unebenheiten des Bodens an, so daß das Schiff genau waagrecht stand.

試訳:
先端の皿状になった着陸脚が地表の凹凸にあわせて伸縮し、艇体を水平にたもつ。
#主語は皿ではなく脚(複数形)。だいたい、平らなものをでこぼこの上に置いたら、余計ぐらつく。……とはいえ、これはローダン世界宇宙船の「テレスコープ脚」を知らないとイメージ湧かんかもなあ。

■34p

ハヤカワ版:
そのまま、丘の稜線まで浮遊しながら、

原文:
und schwebte die Anhöhe zum oberen Senkenrand hinauf.

試訳:
窪地のへりと同じ高さまで浮上して、
#艇は窪地に着陸し、縁を越えると視界が届かないので、そこまで偵察している。その前の「直近の隆起まで」を「丘の周辺だけ」としたのに引きずられた形。

■37p

ハヤカワ版:
あるいは、藪のなかに動物がいるのか……? 高度を下げてみたが、それらしきものは見あたらない。

原文:
Einmal glaubte er ganz sicher zu sein, daß unter ihm ein paar stämmig aussehende Pflanzen hin und her liefen, aber als er sich tiefer sinken ließ, konnte er sie nicht mehr sehen.

試訳:
一回など、下方でずんぐりした植物が動きまわるのを確かに見たと思ったのだが、下降してみてもそれらしきものはみつからなかった。
#「動」く植「物」で、動物ー、とか言わんでほしい。あえて「蔓がのたくる」とかにする手もあるが、後のストーリーからして、実際に「植物が走りまわっていた」のだろう。

■38p

ハヤカワ版:
アッカローリーとペトラクツ人も降りてきた。

原文:
Rhodan, Zeno und Gayt-Coor formierten sich.

試訳:
ローダン、ゼノ、ガイト・コールの順で隊伍を組んだ。
#実際には、前の段落で「ローダンと同行者二名は」着地している。なお、試訳もけっこう恣意的である。原文は要するに「フォーメーションを組んだ。」としか書いてない。

ハヤカワ版:
その程度の偽装では、探知機はだませない。《プリント》のシステムも反応しなかったはずだ。

原文:
Kein Ortungsgerät, das hatten die Anlagen der PRYHNT bewiesen, ließen sich von Äußerlichkeiten täushcen.

試訳:
外見をとりつくろっても探知機はだませない。それは《プリント》のシステムが証明していた。
#「現に《プリント》のシステムには発見されているではないか。」とかやるとくどいかな……。

■40p

ハヤカワ版:
水がないのに成長しつづける植物とは……! この一帯が、ますます不気味に思えてくる。

原文:
Die Pflanzen wurden Rhodan immer unheimlicher.

試訳:
ここの植物のことがますます不気味に思えてくる。
#だから、水はこれから探すのだ。→42pの「湿った砂」参照。

誤訳部分というのは、日本語でのつながりが変になることが多い。なんとなく、それをとりつくろおうとして泥沼にはまっているような気が、ふつふつとしてきた。ともあれ、当初はこのへんでやめるつもりでいたのだが、ローダンとフルロックの対決シーンがえらいことになっている……ようなので、最後まで照合することにした。もう少し簡潔にしたいところだが、どうなるかは、またそのとき。

2019/06/10追記:結局、仕事が忙しくなって最後までできなかったのが悔やまれる。なんか、骸骨がひとりでにローダンの方へ転がってくる誤訳とか、ひどかったなぁ……。

Posted by psytoh